x:前縁からの距離
B:舵の幅
が用いられる。
舵の直圧力の曲線はある舵角でピークとなり、舵角がそれを超すと一時低下する。小さい舵角のときは水は舵板に沿って流れ、定常流であるが、舵角が大きくなると前後縁から渦を生じて不安定な乱流となり、全圧の75%ほどを占める背圧が減る。この状態を失速(Stall)という。
この失速角を越すと直圧力は再び増加し始める。失速角は舵板の形及び縦横比(Aspect ratio)によって変化する。
旧海軍の系統模型試験1)によれば、舵板の高さをHとすると舵の縦横比(H/B)の大きな舵は、小さい舵角における直圧力が大であるが失速角が小さく、H/Bが小さな舵は失速角は大であるが小舵角の直圧力が小さい。
実用範囲の舵の縦横比(H/B)=2.5〜0.4、厚さ幅比t/B<0.2(tは舵の最大厚さ)の場合、失速角と失速までの最大直圧力は表5.44に示すが、高速艇ではプロペラの後流をカバーするようにHをとってH/B=2.5〜1.5程度のものが使用されることが多い。これらは、いずれも最大舵角35°では失速している。それまでの直圧力の最大値は35°における直圧力より低く、失速後の直圧力はビューフォイ式による値×1.38として求められる。また、圧力中心の失速後の値はx/B=0.3+0.2θ/90となる。
楔形断面の舵板は高速時の失速を遅らせ、高速性能を向上させる。防衛庁の行った楔形舵の模型試験2)では、H/B=2,367、t/B=0.1085の舵が、舵角15°から直圧力の増加が小さくなり始め、20°で失速する。圧力中心は連続的に変化している。舵形状及び計測結果を図5.22に示すが直圧力係数Cnは
直圧力の中心は
x/B=0.214+0.14sin2θ
縦横比やt/Bを変化させた系統試験は行っていない。
一般の船舶に使用されるt/B=0.13〜0.20流線形断面は、高速艇ではキャビテーションないし空気吸込を起こしやすく適当ではない。約19ノット(V/W1/6≒14)の艇で舵面積を等しくした流線形舵と櫻形舵との旋回性能を比較したところ、楔形舵の方が優れていることを確認している。
30ノット程度までの艇では単板舵が良好で、それ以上の速力に対しては櫻形舵を用いるとよい。
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