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足してきた。これは実質上5086の化学成分に近づけながら(Mg量は5083の規格値の範囲内にある)5083の機械的性質を要求してきたことになる。このようにして我が国では小型のボート以外の船体主要部の材料として広く5083を使用してきたが、米国においては、クルーボート、サプライボート等の業務用高速艇には主として強度は多少劣っても応力腐食の心配の少ない5086が使用され、船舶用アルミニウム合金の標準材料となっている。この材料は我が国では般用としての実績はほとんどないが、加工性に関しては5083より幾分優れているし、押出性も5083より良いので、さらに肉厚の薄い大型押出材の製造も可能であるため、特殊の高性能の船以外には今後使用されることが多くなるであろう。
運輸省の検査を受けるアルミニウム合金船は鋼船構造規程に準じて材料試験を受けるが、JIS規格材を使用するのが原則である。このような我が国の5083の発達の歴史が忘れられる日が来て、5083がJlS規格のみによって製造されるようになると、あるいはアメリカ同様、般用としては5086を使用しなければならない時が来るかもしれないし、また5083を輸入する場合にもこの点に注意する必要がある。
5.2.2 材料の耐力
耐力は原則としてJIS規格値によるが、特に耐力を指定して発注した材料については、材料試験成績を確認のうえ、指定耐力の材料として取扱う。加工硬化材を溶接したとき、溶接部の耐力はO材の耐力とする。
耐力は規格値と実績平均値との間にかなり差があるが、基準では保証された値、すなわち、規格値を探らざるを得ない。また、溶接部の耐力も実績平均値はO材の規格値よりかなり高くなるが、これも溶接方法が厳格に管理されたもの以外は保証し得る値としてO材の規格値を採る。もし溶接火熱を厳密に管理し、耐力を保証し得る工作が行われることが施工法試験によって確認される場合は、保証し得る耐力を定めてこれを採用することができる。
加工硬化材の外板等が肋骨等と溶接されるときは、外板等の耐力はO材の耐力とする。
曲げを受ける骨部材を加工硬化材で組立てる場合、溶接を使用しても加工硬化材の耐力で計算して差支えない。ただし、面材の溶接継手は曲げ応力の低い位置に配置し、ウェブの溶接継手とは適宜シフトする。端末の溶接部はO材の耐力で設計し、梁の深さを深くし、又は十分に強固な肘板を設ける。
加工硬化材溶接構造の船体の縦強度は厳格な溶接入熱管理が行われ、それぞれの溶接継手が適当にシフトされている場合は、加工硬化材の耐力を用いて設計することができる。この場合、ブロック継手にも当然シフトが要求される。
暫定基準には単に溶接によって低下した耐力を使用するように定め、RR11基準(案)では溶接部が最大応力位置となるとき、低下した値を採るように定め、また、溶接により組立てた骨部材には素材の耐力を採るように定めているが、上記のように解釈すべきである。
5.2.3 船の使用法と外力の想定
高速艇の構造設計に当たっては、まず第一にその艇の使用条件に従って波浪外力を想定しなけ

 

 

 

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