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(3)ディープV船型
暫定基準はディープV船型が広く実用される以前の資料によるもので船型に関する外力規定はない。したがって、ディープV船型の構造設計に当たっては暫定基準の規定以外に、RR11基準(案)によって縦曲げモーメント及び水圧を検討しなければならない。
ディープV船型は体感知遠度が低いので、荒れた海上で高遠が出せる。そのときの加速度と曲げモーメント、水圧との関係が在来型の船尾がフラットな高速艇船型の場合と相違する。
(4)船尾端における水圧
暫定基準では船尾端における水圧を最大水圧の1/2と規定しているが、高速ではさらに高い水圧が発生し得る。RR11基準(案)では、速力に応じてこの船尾端の水圧を定めている。
(5)骨部材の計算
暫定基準では骨部材も外板と同様に塑性曲げモーメントを設計の基準とする塑性設計法が採用されているが、RR11基準(案)は、部材の断面に生ずる応力をある限度(例えば、弾性限度)以下に収める、いわゆる、弾性設計法を採用している。
骨部材に対する有効水圧は暫定基準では実績船を塑性計算で解析して小骨(縦肋骨)に対しては外板の2/3、大骨(船底肋板)に対しては1/3としている。
RR11基準(案)では、主としてディープV船型の実測応力を弾性計算で解析して、小骨に対し外板の1/3、大骨に対し外板の1/9としている。
その後、実船解析を進めたところ、船型によってもこの比率に相違があることが判明し、4.3に述べたような分布となっていることが分った。
5.1.3 計画時の余裕
構造部材の設計に当たって、曲げモーメント及び船底衝撃水圧は満載排水量、隔壁設計においては満載喫水を計算の基礎とするよう規定されている。
ここに言う満載排水量は、完成軽荷排水量に計画搭載物件を全て積載した状態であって、計画時の満載排水量ではない。高速艇の場合、計画資料が不足すると計画排水量に対し、詳細設計完了時の排水量、完成時の排水量が大幅に超過する例は多く、時には20%を超す例さえある。このような程度の重量増があっては、計画排水量に対して算定された構造部材寸法では不足することも起こり得て、完成後補強を要することにもなりかねない。
計画排水量には、あらかじめ適当な余裕を持たせるとともに、詳細設計中の重量精算、船殻完成時の重量実測、機関や大型艤装品等の重量実測などにより、常に予想完成排水量を管理し、必要があれば早めに対策を講じて、完成時に排水量超過による部材再計算を必要としないよう心掛けねばならない。
排水量超過は構造部材寸法の不足をきたすばかりでなく、艇の性能そのものに大きく影響することとなるので、重量管理を厳重にし、重量見積りの資料を集めて次の設計に反映させなければならない。

 

 

 

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