波高・波長比の大きな波に同調すると、低速でもピッチングは大きく発達する。海底が浅く、潮流の速い峠付近では「うねり」の波長は短くなるとともに岨度は高くなり、1000トン級の貨物船でも大きくピッチングして岬を回れずに引き返すことがあるし、高速艇が沖合で天候が急変し、波に向かって船を立てているのがやっとの速力で船底に損傷を生じた例もある。
船のピッチングの固有周期を実測することは難しい。停止中の船でも簡単にピッチングを起こすだけの起振カを与えることは困難であるうえ、減衰が速やかで観測できるほどの揺れとならない。ごく小型のボートの場合、船首を水中に押し込んでピッチングを発生させることができるが、揺れ回数が少なくて周期の計測精度は高くない。高速艇の水槽模型でも同様で、停止中の計測記録は少ない。
表4.2に示すピッチング周期は、模型試験を行っていない長さ4.2mの小艇の停止中の実測値の外は全て模型船の規則波中自航試験で求めた同調周期で、停止中の記録のある4例では航走中の値の方が10%余り大である。
波との出会周期が同じでも波長が違い、船速が相違すれば同じ波高の波に対する応答も必ずしも等しいとは言えないし、あるいは同調周期にきわめて近い速力での試験が行われていない場合があるなど、固有周期の決定には不完全な点があるが、次の算式によって固有周期の概略を推定することができる。
ディープV系船型の場合は他の船型より周期がやや短く
前ページ 目次へ 次ページ
|
|