日本財団 図書館


 

また、使用実績からアルミニウム合金はクラック伝播の恐れのないことが明らかとなったので、チャイン、ガンネルのリベット継手は廃止された。
「魚雷艇10号」は試運転中に47.72ノットを出して当時のディーゼル艇の世界最高速を記録したが、試運転中に船底外板の凹損や骨部材の変形を生じた。この艇の耐波試験及び使用実績により、船底衝撃水圧と速力との関係が明らかとなり、構造基準が改められた。運輸省の軽構造船暫定基準はここまでの技術資料によるものであり、今日の高速艇の主流となっているディープV系の船型の設計に際しては、さらに十分な検討が必要である。
昭和40年度(1965)計画の「高速6号」は、ディープV系の船型を採用した25m艇で、「魚雷艇10号」と同様の構造が採用された。この艇はその船型の特性により、また、エンジン計画の特性上、青森県東方の太平洋でほとんど常時25ノット以上で使用された。耐波試験では構造上の問題はなかったが、就役後、前部船底に凹損を発生した。ディープV船型は波濃中の最大衝撃加速度が比較的小さいこと、ヘビースラミングの発生が在来型の船型に比べて少ないことにより、波浪中において発揮し得る速力が高い船型である。乗員の耐え得る限界までの条件で走るということになると、同じ波の条件では在来型艇より高速が出せ、それぞれの艇がそれぞれの限界条件で走ったとき、乗員の受ける衝撃は同等であっても、艇の受ける局部外力や、艇全体で受ける曲げ荷重が在来型船型の場合と相違していても不思議ではない。そこで次の「魚雷艇11号」もディープV船型であるが、これの耐波試験と「高速6号」の耐波試験及び使用実績から、船型の相違による船尾端の船底勾配のファクターを加えた基準が作成された。これが「軽構造船基準(案)」(日本造船研究協会第11号基準部会・RR11)作成の基礎資料となった。

 

2.3 全溶接構造と大型押出形材の採用

鋼船もほとんど全溶接となり、リベット打ち工が減少していること、リベット継手の漏洩、特に燃料タンクの漏洩などの弱点を考えると、アルミニウム合金船体も全溶接構造に進むべきである。しかし、すみ肉溶接は欠陥が生じやすいので、重要な部分からこれを除外することが望ましい。また、加工硬化材を使用して軽量化を図るとき、外板パネルの長辺沿いが溶接によって焼きなまされ、加工硬化材の利点が減少する。そこで骨と板とを一体にした押出形材を使用し、押出材が加工硬化材より耐力が低いことをスチフナ根部の外板厚さを増すことによってカバーすれば、加工硬化材の外板と珠山形材とのリベット接合構造とほぼ同程度の重量とすることができる。
そこで外板幅300?oに骨1本を組合せた押出形材を製造し、船底のそれぞれの部分に対する心距に応じて幅を切りつめ、3本ないし4本を自動溶接によって接合して使用することとした。昭和44年度(1969)計画の「魚雷艇11号」型は、このように外板及び甲板を計画し、船首部の工作困難な部分のみを在来の球山形材構造とした。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION