第2次大戦の参戦に先立って米国海軍が魚雷艇設計コンテストを行い、8隻を試作し、1隻を英国から購入した。その内の1隻、PT8は、ビューローオブシップス(Bureau of Ships)設計、フィラデルフィア(Philadelphia)工廠が建造して1941年(昭和16)に完成したアルミニウム合金製の81フィート艇(24.58×5.69m)であるが、海軍工廠が魚雷発射管を始め金物類に駆逐艦用のものを使用したため、大幅な重量増となり、使用した試作エンジンの使い難きとあいまって十分な性能を発揮できなかったが、アルミニウム合金製の船体に関しては十分に満足すべきものであった。この艇は戦後に新魚雷艇の設計資料を得るための波浪中運転を行い、各種の計測を行っれこの報告が有名なヘラー・アンド・ジャスパー(Heller & Jasper)の高速艇の構造設計に関する論文である。同論文は1960年(昭和35)、英国造船学会で発表されるまで公開されなかった。それまでに我が国では独自に高速艇の波浪荷重の研究を進めていたので、我が国の魚雷艇開発には直接影響することは少なかった。