一部利用しているものが多く、恵まれた条件にあるものは極めて少ないのが実状であるが、少くともその造船所で建造可能な船の半分以上の長さは必要である現図場の床面は凹凸のない平らな面で、床材は通常3〜4.5cmの乾燥した軟材を目違いを防ぐためサネハギにして張りつめ、更にこの上に4〜6mmのシナ又はラワン合板を張り、この上に黒板塗料(黒又は青)を塗って使用するのが普通である。また同型船の建造が見込まれる場合は、更にこの上に4mmの合板を張って現図を描くと保存のために便利である現図場の採光は立地条件によって左右されるが、照明は特に影を生じないよう留意すべきである。
現図に必要な用具としてバッテン(シナイ定規)、巻尺、直尺、差し金、コンパス、ビームコンパス、直角定規、スミツボ、スミサシ、ナイロン又はピアノ線、ウエイト又は留針、バッテン用鎚、そして型板製作用の大工道具である。
バッテンは木理の通った弾力のある木材を使用するが、普通は桧又は米松を使用し、単材の場合と三村くらいを合わせた積層材の場合があり、積層のバッテンはムラがなくまた狂いの少いバッテンができるバッテンの断面形状は使用する場所によっても異なるが、小型角型船等を造る造船所では、深さを一定とし厚みにテーパーをつけたもの(元で深さ×厚さ3.5×3.5cm先で25×1.0cm)を長尺、中尺、短尺各1本と、等幅、等厚のバッテン大小各2本くらいあれば良い(大は1.5cmX3cm、小は1.0cm×3cmの断面)。巻尺はスチール製の20m以上のものが望ましい(布製巻尺は湿度等による伸縮が犬であるので使用すべきではない。)。直尺は市販品の1.0mと20mのSUS製のもの各1本は必要である。
コンパスやビームコンパスは小型のものは市販品で間に合うが、大型のものは市販されているものがなく各造船所で手製のものを使用する例が多い。スミツボはその色別けによって赤、黄、白、等3個は必要である。スミツボに入れる顔料にはポスターカラーが使用され、床への付着を良くするためアラビアのりを混ぜて水で溶かして使用するスミ差しは現図の筆記用具であり、先は線の描き入れに、片方は字やマークの描き入れ用に加工されている。材質は竹で、真竹又は孟宗竹が使用されているバッテンを固定するウエイト又はスパイキ(バッテン留針)は、5寸釘を先端のみ加工したものを代用する場合が多い。スパイキは床面を傷けるのでできれば鋳鉄製(重さ約1.0〜1.2kg)のウエイトを使用する方が良い。
木取り用の型板材料としては、従来は杉板や合板が多く用いられてきたが、最近は透明のフィルム(例:商品名MSフィルム)等が使用されている。チャインやガンネルのような曲り型には杉板や合板が使用されるが、肋骨や肘板等にはその型取りが簡便であるためフィルムが多く使用されている。型板の厚さは型の大小によって異なるが、大体6〜12mmの杉板が用いられ、合板の場合は4mmが使用されている。
型板製作用の道具としてはフィルムの場合は布鋏があれば良く、木製型板の場合は9寸両刃鋸、引廻し、鉋(平鉋、反鉋)、玄能等と金敷き(釘を折り曲げる時の受け)が必要である。
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