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3 可展面と非可展面

図学では、空間にある曲面が、その面上の線の長さを変えずに一平面上に移せるとき、その曲面を可展面といい、柱面・錐面・接線曲面(接平面包絡面)の3種に限られる。
造船では普通は可展・非可展の区別をしないが、この区分は具体的な展開作業を行う上で便利なので、意味を変えて用いることにする。
造船における可展・非可展の区分は、部材に榛鉄加工があって、その加工がプレス押しだけで完成できるか、できないか、である。
造船では雌雄型による押切り成型はないから、この区分で図学の定義と矛盾しない。
また、この区分は板材に対してであって、形材では用いない。
プレス加工とは、矢弦により所要角に折ることで、この折線をふやすことで曲面成形ができる。曲げローラー加工は折線を平行に無限にふやしたと見做し、プレス加工と同等とする。
角度を付けて折る線をKL(ナックル)線、曲面を成形してゆく線を、ロールラインと称して区別している。
3.1 可展の条件
プレス曲げだけで、撓鉄加工が完成できるには、次の二つの条件が必要である。
一つは、KL線=ロールラインが直線で、二つには、その面に絞りや捩れがない、ことである。絞りや振れは、プレスでは与えることができず、熱加工による局部収縮で対処している。収縮による成形と逆に、ハンマーで叩き伸す方法(ピーニング)が用いられることがあるが、空間形状と展開形状とで、その面上の線の長さが変る点で類似であり、可展ではない。
図学教科書では、展開手法の典型例として多面体(平面多角形で囲まれた立体)の表面を、面の角(陵線)での折れを開いて、平面上に拡げる説明がある。
造船分野で実際に出てくる多面体といえば台形(図23.1)であるが、このとき吟味しなければならないのは、その構成面に振れがないのか、どうか、である。この面の四辺形を展開するのに、対角線を結んで三角形に分割し(図2.3.2)、その各実長を求めて展開してみる。

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図2.3.1

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図2.3.2

 

 

 

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