まえがき
小型船造船業界では、技術者の高齢化が進む中で、技術の習得に長い年月が必要とされる「現図」について、後継者の育成が焦眉の急となっており、また、コンピュータシステムの導入に当たっても、現図システムの基本を正しく理解できる技術者の確保が危惧されているのが現状であります。
これは、造船現図が経験による熟達した技能と考えられたため、普遍的な指導書の作成が行われず、この技術の伝達が、個々に熟練者の経験に基づく手法や手順のみに依存してきたことが大きな原因の一つであると思われます。
このため、当会では、平成7年度に指導書作成分科会を設置し、現図技術者を育成するための講習会用指導書原案の作成を行い、ここに初版を刊行いたしました。
本指導書は、便覧的な従来の指導書の限界を克服して、現図展開の技能を体系的かつ論理的に解き明かすことを主眼とし、その原理原則を説明しているため、一見実践には迂遠にみえる体裁になっておりますが、こうした基礎的学習は、かえって応用力を高め、経験をも凌駕し、習熟期間を短縮する効果をもたらすと考えます。また、実務経験者にも新しい認識を与えることにより建造方法の進歩に大いに寄与するものと確信いたします。
終わりに、本指導書の発刊に当たり、原案の作成編集に一方ならぬご尽力を賜りました小型造船技術講習事業指導書作成分科会委員各位に厚くお礼を申し上げるとともに、運輸省海上技術安全局のご指導と日本財団のご援助に対し心から感謝申し上げます。
平成8年6月
財団法人 日本小型船舶工業会
会長 真砂 忠夫
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