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模型船による水槽試験には、上述の3種類の諸試験の他に、抵抗試験時や自航試験時に走行中の船首尾の浮沈量を計測(航走中の姿勢の観測)したり、船尾に装着するプロペラ位置の流れの挙動を計測する伴流計測、船体まわりの流れを観測する流線計測などの諸試験も同時に行なわれることが多い。また、模型船が航走しているとき、模型船まわりの水面における波の発生状況(造波現象)などを観察して、その船型の良し悪しを検討する資料としている。
第1章1.4の末尾の表に掲げた多くの馬力雌定図表などは全て、模型船や模型プロペラによって、母型の形状を基準に系説的に幾何学変化させた数多くの模型船・模型プロペラ群について水槽試験を実施し、その計測結果を実用向きの表現法に整理しまとめたものである。これには膨大な費用、年月と人員をかけている。

 

模型船により水槽試験を行ない実船の所要馬力を推定する方法は最も正確な方法であるが、多くの場合この試験結果を見て船型の計画をやり直すことは、建造スケジュールの上で時期的には不可能なことが多く、初期計画の確認しかできないのが欠点である。
大型の試験水槽をもつ機関では、系統的な船型改良研究または高経済船型開発のための系統的な試験研究を行っており、その成果を実船の設計に取り入れられるように試験データを蓄積している。
計画船に対して模型船による水槽試験ができなくとも近似した類似船の資料があれば計画船の造波抵抗係数(または剰余抵抗係数)・形状影響係数や自航要素などをかなりな精度で推定できる。この場合、類似船が1隻ではなく、数隻の資料があれば、なおさら好ましい。しかし、このような類似船の資料がない場合とか、特殊船であって、その資料が不十分である場合には、下記のような大型の試験水槽施設を保有し、水槽試験に長い経験をもつ研究機関などに照会するなどして、実船の馬力の推定などに正確を期さなければならない。

 

運輸省船舶技術研究所推進性能部
(東京都三鷹市新川6−38−1、TEL0422−41−3038)
農林水産省 水産工学研究所
(茨城県鹿島郡波崎町海老台7621、TEL0479−44−4961)
(財)日本造船技術センター
(東京都豊島区目白1−3−8、TEL03−3971−0266)

 

 

 

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