3.5 推進性能を調査するための模型船による水槽試験
船を運航する上で、その主機関の燃料消費が少ない船型を有する船舶であることは船主にとって経営上大切なことである。
船舶の設計・計画を行なうとき、航海速力をいくらに決めるかは船主の船舶運用の経済問題として最も重要なことで、船舶の設計者にとっては計画船の航海速力における機関出力の推定の的確さを問われる重要な問題となる。
一般に、船の主要寸法と諸係数および船体形状を表わす線図が決まれば、その排水量を計算し、船主の要求する載貨重量がとれるかどうかを確かめるとともに安定性能(復原性)を確認する。一方、類似船などの資料から略算法により想定した假の搭載主機関の種類、出力、回転教が決められると同時に、基本設計当初に要求されている速力が実際に出るかどうかを確認することになる。このために最も確度の高い方法が、模型船による水槽試験である。
しかし、本方法は試験水槽施設を使用しなければならず、模型船や模型プロペラの製作、実験の実権等に少なからぬ時間と経費を必要とする。
試験水槽(Towing tank)で使用される模型船は大型である程、信頼性が高いので、長さ6〜7mの木製またはパラフィン製の模型船を速度約12m/sec程度まで試験できる長さ200m以上の長大な大型試験水槽が主要海運国に建設されている。しかし、小型試験水槽も、少ない費用でいろいろの船型をもつ模型船間の比較研究や各種の流体力学的な基礎研究などが容易に行なえる長所があるため学校・研究機関などに数多く作られている。
また、水槽試験において使われる各種物理量を計測する最近の諸計器は、電子技術やセンサー、コンピューターの目ざましい発達にともなって、ひと昔の目に比べて飛躍的に発展している。したがって、その計測技術や計種システムは驚異的な高度化を達成しており、今後もさらに新しい水槽試験技術の開発が進められてゆくものと考える。
推進性能を調査する目的で行われる模型船による水槽試験では、通常次の3種類の試験が行なわれている。
(1)抵抗試験(Resistance test)
実船の縮尺模型を曳航して模型船の速力VM(m/sec)と抵抗RM(kg)の関係を計測し、その試験結果を解析して造波抵抗係数CW(または、剰余抵抗係数CR)および形状影響係数Kを求める。
(2)自航試験(Self−Propulsion−Test)
模型船と同じ縮尺率で造られた模型プロペラを模型船に装備して、模型船に積載された駆動電動橋により自航動力計のプロペラ軸を介して模型プロペラを回転し、模型船を自航させる。
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