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幅の半分または船体の全体の高さ(深さの1.5倍)以上なければならない。長さの方は、一般に半分ずつ反対に重ねて描くが、長さ方向の寸法を縮めるのは、曲率の大きい小型船では好ましくない。
現図は、船舶建造の基本となるものであるが、その良否は船の性能を決定するものなので、現図場は十分整備しなければならない。
現図場は広い面積の柱のない所が必要なので、鉄工加工場の2階または中2階に設けられる例が多い。床板は、十分乾燥した伸縮のない木材を張りつめるが、ベニヤ板を使用する場合もある。細い線が多く面かれて判読するのが困難な場合もあるから窓を多くして採光・通風を十分にしたい。
床板は、一般に黒色または暗緑色に塗装されるが、周囲にはバッテン、型紙、型板の置場を適当に配置する。
現図場は、マーキングを行う加工場に近いのがよいが、でき得れば設計室に隣接していることも望ましい。
現図場は、小型船造船業法で定められた特定設備に指定されている。
2.4.4運搬設備
鋼船の建造が運搬業であるということは、造船界の定説である。運搬に使用されるエネルギー即ち仕事は、その運搬するものの重量とその運搬したものの移動距離との相乗積に比例するから、鋼材のような比重の重い物質の運搬では、その運搬経路が問題になってくる。即ち、運搬しなければならない2点間の最短距離を通って、そのものが運搬されなければならない。このことは、鋼材などが不必要に持ち上げられたり下ろされたりすることを極力やめなければならないということになる口運搬の理想的な姿は、地面すれすれにA点からB点へ滑るように移動していくことである。この意味からも、小さいボールやコロやベルト・コンベヤ式のもので移動されることが望ましい。クレーンや背の高い運搬車で、高く空中を運搬されることは決してよいことではない。まして、重量物をあちらこちらと動かし廻わすことは絶対に止めなければならない口流れ作業方式が運搬形式の中で理想的であるというのは、この仕事の原理からである。途中に邪魔物がある場合は止むを得ないが、地面をコンベヤ式に円滑に移動することを立前とすべきである。
運搬の問題で、次に考えておかなければならないのは、その移動する速さの問題である。移動する距離は同じでも、時間の要素が加わってくると、重量と速さとの相乗積になるから、これは工率即ち馬力の問題になる。移動の速さが遠ければ速いだけに馬力を食うから、燃料や電力をそれだけ消費することになる。このことは運搬計画の経済性として頭の中に十分に入れておかなければならない。所謂スピード化には莫大な費用がともなうので、運搬距離を少なくす

 

 

 

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