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2.4工場設備

2.4.1船架
造船所の設備の中で面積をとり、また金のかかるものは、船体を水中から陸上へと引揚げる船架である。船を引揚げる装置としては最も簡単なものは砂浜に木製架台をおいて船底に取付けた堅木のスベリ材で人力で引揚げるものから、敷板とコロとウィンチまたはカグラサンを用いるものまであるが、船舶が大きくなると、固定レールを敷いて、台車またはソロバンと呼ぶローラ型式のものを使用して大型機動または電動ウィンチで引揚げる。固定レールは用いずに木台と獣脂を用いるいわゆるヘット式のものもある。
いずれの場合も斜面の効用を活用して重量物を引揚げるものであるから、その引揚げに要する力は、船体重量は勿論その斜面の傾斜およびコロ、車輪、ヘットおよび滑車やロープの摩擦力によって定まる。引揚機の能力の決定は引揚速度および使用滑車の倍力等を仮定すれば、第2.7図に示されている方式で換算できる。
しかし、台車やコロの滑り摩擦係数は、その手入の状況やレールの凹凸度によっても変化するから、その船架の実情を加味しなければならない。
引揚機には、いろいろな型式のものがあるが、大別して、ウィンドラス型とキャプスタン型に分れ、原動機は内燃機関または電動機である。いずれも滑車の倍力が大きく、ワイヤーの長さが長い場合には引揚索の捲取装置をもった方がロープの整理上大切で、危険防止にもなる。このローブの捲取はトルク・コンバーター等で連動されているものもある。
船架のレールの傾斜角は、その船架のある水面の水深、千満、海岸の傾斜等に左右されるから実情に応じて設定されなければならない。水深が許されれば、全体にキャンバーをつける場合や陸上部に向って順次傾斜角を減ずる場合もあるが、傾斜が変更する地点のレールの接続部を円滑にする必要がある。
一般には、船台や船架が順次に増設された場合が多いので、相隣る2つの船台が同一幅、同一傾斜になっていないところが多いが、同じ要目の船台を正しく並べておくと、非常に幅の広い台船とか作業船の工事を行うときに便利である。
船架は、波打際の所および水中部分の工事の不十分なものが一般に多い。船の上下架の際、この部分は特に大きな集中荷重がかかるし、波で痛められることも多いので、その構造には特別の配慮が必要である。
船架には第2.8図a,b,cに示すように、台車、ソロバン、ヘット式等いろいろな引揚型式があるが、第2.9図のようなセミ・ドック式やシンクロリフト式がその地形に応じて採用される。

引揚機の能力の概算

 

 

 

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