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補講(鋼材の性質と検査)
船舶は、ほかの陸上製品に比べて大型で、多数の人命と貴重な積荷を運搬している。そして、航海中での波浪による荷重の変動、動揺・振動など複雑な外力を受けているので、鋼材の性質いかんによっては重大な事故の原因にもなる。したがって、船殻部材および艤装品類は十分に信頼のおける材質のものでなければならない。このため、鋼材は国および船級協会の規則にしにしがって、試験・検査され、合格しなければ使用できないことになっている。この検査は、鋼材メーカーにおいて試験官立会いのもとに行われ、造船所に納入される。
この検査に合格した鋼材を船級材と称して、製鉄所のマークとともに各船級協会の記号・紋別記号の認印がおされる。また、船級材にはその鋼材の成分、機械的試験の結果を示し、その品質を保証するミル・シートが必ず付いている。
国の規格として、日本工業規格(JIS)には一般構造用鋼材、溶接構造用鋼材とがあり、その引張強さ別に成分、機械的性質を定めている。(指導書P.8の第1.4表、P.9の第1.5表を参照のこと。)
各船級協会においては、おのおのの鋼のグレード別にその満足すべき条件を定めている。このグレードはNK、AB、LRほか4船級協会で作成した世界統一規格であり、軟鋼については、
グレードA 普通鋼
グレードB A級とC、D級との間の鋼
グレードD ハイクレート鋼
グレードE とくに、切欠ぜい性に耐えうる鋼
の考え方で規格が定められている。しかし、各船級協会によって、この世界統一規格の受け入れ方が異なっているので、必ずしも各船級協会規則の要求程度が一本化されているわけではない。(NK規格材とJIS規格材との対応については、指導書P.8第1.3表、第1.4表を参照のこと。)
D級鋼は、クラックに対して強い耐久性をもち、E級鋼はクラックが伝播しにくい強い性質をもっている。クラックの発生、伝播を最小限に食い止める目的に使用されるものをクラックアレスターという。船級協会規則においては、船の大きさによってクラック・アレスターとして必要なリベット継手の場所を定めているが(このようなリベット・シームについては指導書P.90〜P.91を参照のこと)、この際、E級鋼を使用すれば、その場所のリベット継手は設けなくてもよいことになっている。

 

 

 

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