また、振動計を用いてまず計測されるのは軸系に生じている種々な振動の重なりあったものである。これを周波数分析装置を用いて個々の振動成分に分けた後、問題としているねじり振動成分を摘出して観測するわけである。現在ではこの過程も非常に簡単に行えるように機器が発達しているが、それだけに現象の本質を見誤らないようにすることが必要である。ねじり振動はもし問題になるような場合はクランク軸の折損というような深刻な事態につながるので特に注意を要する。
3.3危険速度
最近になり、舶用機関に高速機関が広く用いられ始めている。それに伴い、機関につながる軸系の回転数も次第に高速化して来た。同じ動力を伝える場合、回転数が高ければそれに逆比例して伝達回転力は小さくなり、したがって軸はそれだけ細くなる。この様な場合に考慮しなければならない現象が最近舶用の軸系でも問題になって来ている。
この現象について述べよう。
補・39図に示すように比較的細い一様な軸の中央に質量Mの円板が乗っている。このMをハンマで叩いたとするとこの系はMを集中荷重、軸の曲げ剛性を復元力とする横振動をすることはすぐに想像できる。ただ一般にこの振動は振動数が高く、直接目で見ることは難しい。しかし軸にストレンゲージを貼りつけて観測すれば簡単にオシログラフの画面で振動を見ることができる。この図のような単純な軸系であればその固有振動数は簡単に

ともとまる。KLは材料力学でよく知られているビームの式から

と求めることが出来る。ただし、Eは鋼の縦弾性係数、Iは軸の断面2次モーメントである。今この軸をnc≡60fL[rpm]で回転させるとすると軸はすさまじいふれまわりを始め、たちまち大きく曲がり、破壊する。そこでここで定義した横振動数に対応する回転数nc[rpm]をふれまわりの危険速度CriticalSpeedという。実際間題として軸はn=0.8n、[rpm]でもふれまわりが激しく、とても定常的な運転をすることはできない。したがって機械は軸系の回転速度n[rpm]が
O.75 nc < n < 1.25nc
の範囲では連続運転をしない事になっている。
舶用の機関の場合、主軸系のフランジを現場や工場で不用意に重いものに変えたり、またねじり強度の上からは十分の強さがあるからという理由で主軸系の一部や機関付属の機器類の軸を細くするなどのことを行うと、この危険速度の影響でふれまわりが大きくなる場合を生じる。横振動も正確にいえばどの軸系もいくつかの固有振動数が存在するから当然それぞれに対応する危険速度が存在する。
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