1. はじめに
1. パイロットに必要な要素
本書は、グライダーやモーターグライダーの操縦練習をする人たち、また、それを指導する人たちのために、かねがね念頭にあったものを、なんとか順序立てて、まとめてみたものである。内容としては、目次のように、グランドマナーから野外飛行・競技飛行の範囲にまでわたっている。
まず、冒頭で強調することは、日本人の適性の問題である。グライダースポーツは、腕力とか足の力のような体力を必要とするスポーツではなく、むしろ、精神力とか知性を要求される。場合によっては、大自然との孤独の戦いも経験しなければならない。これらの諸条件を同じと考えてみると、日本人は比較的にからだが小さいということで得をしている。
からだが小さいということは、考えようによっては、グライダーの性能を向上させる重要な要素でもある。現在使用されている機体を、日本人向きの細い胴体に取り換えて見たとすれば、胴体の有害抵抗が減少して、性能は向上するはずである。なお、肉体的な問題を取り上げてみると、日本人は眼が出ているので、視界が広い。そのほか、心臓を中心とする血液の循環経路の高低差が少ないので、Gに対して強いとか、また神経反応速度が速いという特徴とか、日本人に向いたスポーツということができる。グライダースポーツは、年齢の幅も広く、たとえば世界選手権でも20〜70代の人まで出場しているのは、肉体的条件よりも、経験・技倆が優先することをものがたっている。
さてこのスポーツすなわちグライダーパイロットになろうとするものは、次の三つの要素を重視しなければならない。
第一は、技倆の向上に努力すること。
第二は、滑翔に必要なもろもろの知識の獲得に専心すること。
第三は、強靱な精神力をつちかうこと。
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