日本沿岸の航行安全情報

−旅客船の運航者から見た日本沿岸−
社団法人日本旅客船協会は、このほど運輸省海上交通局国内旅客課の監修により、旅客船の運航者が“安全運航の知恵”として持っている沿岸海域情報を集計して「旅客船の運航者からみた日本沿岸」と題する冊子を発行した。これらの情報は「注意すべき海域」と「注意すべき事象」をキーワードとして分類してあり、安全留意情報は千八百項目以上になっている。
はじめに
旅客船の運航管理者をはじめとする乗組員は、当然のことながら「安全第一」を最大の信条として船舶の運航に努めている。これらの人々は先輩から受け継いたものや自分で体得した安全に関する情報やノウハウを持っており、これらをアンケートにより集めたところ、約二百五十人の方から二千項目を超える回答があった。
寄せられた沿岸海域情報によると、旅客船が注意している海域は海上交通安全法適用海域に集中しており、注意すべき事象の約半数は漁業に関するものである。
冊子は、百ページを超える内容となっているが、抜粋してその一部を次に紹介する。
注意すべき海域
(F1=フェリー、P=旅客船)
1、北海道西岸
冬季の季節風は、局地的に津軽海峡西口、茂津多岬沖で強く、それに伴い風浪も高くなるので、沿岸に寄せられるリーウエー(風圧差=風の影響を考慮した針路の補正)を考慮して航行している。
(一万五千トン級F、船長)
2、北海進南岸
苫小牧沖約十海里付近は、カニカゴ等を示す大型の浮き玉(ボンデン)があり、視界不良時は動きの少ない漁船とボンデンはレーダー映像による識別が困難であるので、誤認しないよう注意深く観察する必要がある。
(一万三千トン級F、二航士)
3、津軽海峡
十二月〜三月の冬期問は、津軽海峡からの季節風の吹き出しが非常に強く、尻尾崎〜恵山岬の間は強風、三角波、吹雪で航海の難所である。(七千トン級F、船長)

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4、東北地方東岸
犬吠埼〜尻尾崎問の二百メートル等深線付近は漁船、ボンデンが多く、特に夜間は二百メートル等深線を大幅に避け、沖合十〜十五海里、場合によっては二十海里沖を航行するようにしている。
(一万三千トン級F、船長)
5、日本海中部
@入道崎を中心とした秋田沖南北海域は、冬季、季節風の卓越している時や発達した低気圧の通過後、予期しない異常な風浪が発生する(うねりも同様である)。また佐渡島北東海域において冬季、北西〜西北西風が卓越している時、異常波、一発波の発生がある。
(一万三千トン級F、船長)
A若狭湾付近は、十一月〜二月にかけて小型底びき網漁船が多数操業しており、春〜秋にかけては

 

 

 

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