海上災害防止センター研修所

油防除訓練施設が完成

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海上災害防止センターは四月十八日、横須賀市の海上災害防止センター研修所で、同研修所内に六億円余りをかけて完成した油防除訓練施設を一般公開した。
平成元年にアラスカで発生したエクソン・バルディーズ号の大量原油流出事故が契機となり、油流出事故への対応・協力のために必要となる体制整備および事故対応に関する枠組みを国際的に規定する0PRC条約が昨年五月に発効して、わが国もこれを批准・承認し「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」の一部改正を行い、本年一月十七日から効力を生じている。
海上災害防止センターの防災訓練所は、従来船員法で定めるタンカーに乗り組む職員等の座学・訓練を実施する機関として運輪大臣の指定を受け、消防訓練を主体としてきたが、世界的な地球環境保護の認識の高まる中、油防除に関し人材育成の面から国際的協力にも寄与するため、日本財団の補助を受け、平成七年度に研修所隣接地に流出油防除能力の向上のための訓練施設の整備を進めてきた。この施設が三月末に完成し、七月一日から油防除専門の訓練コースが開講する。
油防除訓練施設は、約一千百平方メートルの敷地の中に一階が資機材倉庫、二階が視聴覚装置を設備した教室・シミュレーションルームをもった鉄筋コンクリート造り研修棟一棟、沿岸清掃訓練を行うための砂場・岩場・消波ブロックを配した長さ二一・五×幅八×深さ一メートルの模擬海岸プール一面、油防除資機材の取り扱い訓練を行うための長さ一二×幅八×深さ三・五メートルの資機材取り扱いプール一面から構成されており、プールでは実際に油を使い、波を造って実情に近い状況を再現できる世界でも画期的な施設である。
油防除資機材としては、現在世界各地で使用されている各種の油回収装置一式、各種オイルフェンス一式、ビーチクリーナー等を整備している。これらハード面の整備に加え、ソフト面でもセンターが設立以来十九年にわたり流出油処理に対応して蓄積してきたノウハウを盛り込んだ訓練内容となっている。
平成八年度は、五日間の海洋汚染対応コース一回、二日間の海上汚染実習コース三回、二日間の沿岸汚染実習コース一回を計画しており、各コースとも三十人の募集人員で、海陸の油や海に関係するすべての人々を対象としている。特に海洋汚染対応コースは、海洋汚染事故対応のすべてを網羅し、IMOの油防除トレーニングレベルI・IIに対応している。
本年の一月から五百キロリットル以上の油槽施設をもつ事業所にも「油濁防止緊急措置手引書」の備え置きが義務付けられたが、この手引書が有効に活用されるためには、加えて流出油防除に関する知識および技術を有する職員の養成が必要不可欠と考えられる。この人材を育成するために油防除専門コースは、極めて有効なものといえる。

 

 

 

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