救命胴衣着用で命を守ろう

新潟運輸局 先任運航監理官 浅野昭二

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今年は国民の祝日「海の日」を最初に迎える年である。海事関係者の期待は一層大きいものがあると思うが、従来の「海の記念日」的な行事では、海事関係者だけの行事になりかねない。広く国民にアピールする行事が必要ではないかと思う。私のふるさとの秋田県では、海に面した市町村が協力して「海の日」の種々の行事を計画していると聞く。海事関係者の意気込みが感じられる。
日本人の労働時間短縮等が着実に進み、年間の休日が増えてきている。これに伴い海洋レジャーもますます盛んになることと思われる。プレジャーボート等の海難事故は増加傾向を示しており、今後も事故の増加が予想され心配だ。
新潟海上保安部および直江津海上保安署では、新潟西港入り口付近や直江津港付近で釣りをしている人を対象に、佐渡航路や九越航路のフェリーに乗船してもらい、ブリッジから大型船の運航状況を見聞させ、港の入り口で釣りをしていると、フェリー等の大型船の航行が危険であることを認識させるなど、各機関でそれぞれ事故防止の対策が講じられているが、これにも限界があるようだ。
秋田港を本拠にクルーザー(三九フィート・ヨット)に乗っている私は、本業の安全の仕事と併せてプレジャーボート等の安全にも寄与したいと考えている。
昨年十二月四日午後二時五十分ごろ、京都・舞鶴港沖合でカーフェリー(一九、三二九総トン)とプレジャーボート(長さ六・六メートル)が衝突し、ボートの乗組員(釣り人)二人が行方不明になる事故が発生した。海難報告によると、当時の海上模様は、天候は雨で風力七の西北西の風が吹き、波四、うねり一、視程三キロメートルとある。
カーフェリーの船橋当直者は、プレジャーボートの乗組員二人が衝突直前に海中に飛び込むのを視認しており、二人とも救命胴衣を着用していなかったという。
大型船の船長に聞くと、荒天の場合、海面反射でレーダーに小型船の映像が映りにくくなるが、小型船にレーダーリフレクターを取り付けるとよく映るという。レーダーリフレクターがプレジャーボートに備置されていたかは不明だが、救命胴衣を着用しておれば命は助かったのではないかと思う。
行方不明者には気の毒だが、救命胴衣の着用は、小型船に乗る際の不可欠のマナーであると思う。私は、ヨットに乗船していて、時に釣り人の船と出合うが、釣りに夢中になり他船の運航状況に全く気が付かない例をよくみかける。
昨年秋田港からフェリーに乗船して舞鶴港に入港の際、プレジャーボートが本船にフルスピードで突っ込んできた。本船の船長は、警笛を鳴らし事なきを得たが、無謀きわまる危険な行為である。
救命胴衣を着用しない原因は、これまで@作業機能が低下するA温か過ぎるBめんどうなどの理由が挙げられている。最近は、作業機能のよい救命胴衣が開発されており、小型漁船を含めてプレジャーボート等の小型船に乗船する際は、救命胴衣を必ず着用することが徹底されなければならない。私たちのヨットレースの際は、救命胴衣の着用を義務づけている。
「自分の命は自分で守る」大型船も小型船もグッドシーマンシップ一船員の常務)を持ち、運航に従事することが大事である。
「海の日」を最初に迎える本年は、すべての船舶が事故を起こさないことを念頭に置き、ルールを守ることも「海の日」制定の意義の一つであろう。

 

 

 

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