海の気象

沿岸波浪計の観測データからみた北日本の沿岸波浪の特徴

会沢孝
(函館海洋気象台海上気象課)
はじめに
気象庁では、沿岸防災業務の一環として、全国十一カ所に沿岸波浪計を設置し、即時に観測データを収集して波浪を監視し、予報や注意報・警報の発表等に利用しています。また、沿岸波浪計による観測を開始してから二十年近くが経ち、蓄積された観測データに基づく各種の統計結果は各分野で幅広く利用されています。
ここでは、北日本に設置されている尻羽岬(北海道)、松前(北海道)、温海(山形県)および江ノ島(宮城県)の沿岸波浪計の統計データ(主として累年の平均波高、高波の順位等)から、北日本沿岸の波浪の特徴を紹介します。
平均波高と最大波高
図1に沿岸波浪計の設置点と、累年の月別平均波高(折れ線グラフ)、年の平均波高および累年の最大波高を示しました。
なお、この文での波高はすべて有義波高*を意味しています。年平均波高は各観測点ともほぼ一メートル前後で、あまり大きな差はありません。月平均波高は顕著な季節変化(名高く、夏低い)を示す日本海側の観測点に対し、太平洋側の観測点でははっきりした季節変化は見られません。最大波高は江ノ島の九・三メートルから尻羽岬の七・五メートルと各地点とも八メートル前後の値を示しています。

<図1>北日本の沿岸波浪の設置点と累年の波高

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高波の出現と継続状況
高波の上位三十位の月別の出現回数を見ると、尻羽岬は九、十一月(それぞれ五回)、松前は十二月(七回)、温海は十二月(七回一、江ノ島は三月(六回一にそれぞれピークがあり、日本海側の観測点での冬季への集中が特徴です。
また、上位十位までの高波の原因となった気象現象を見ると、尻羽岬は低気圧(六回)、松前も低気圧(6回)、温海は冬型の気圧配置(八回)、江ノ島は低気圧(七回)によるものがそれぞれ最も多くなっています。
次に高波や静隠の状態の継続時間を見てみます。まず六・○メートル以上の波高が半日以上である十三時間以上の継続を目安として、その回数を見ると、江ノ島は五回、温海は三回となっており、松前、尻羽岬では観測されていません。
また、四観測点での最長記録は江ノ島の二十七時間です。静隠の

 

 

 

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