沿岸域環境保全リスク情報マップ整備の促進事業

(社)日本海難防止協会海洋汚染防止研究部
一、事業の目的
(社)日本海難防止協会(当協会)は、平成五年度および七年度の二カ年にわたり、海洋汚染防止に関する調査研究事業の一環として、日本財団から補助金を受け「沿岸域環境保全リスク情報マツプ整備の促進事業」を進めてきた。
現在世界各国では、0PRC条約(一九九〇年の油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約)の発効に伴い「センシティビティ・マップ」と呼ばれる情報図の整備・普及に関する検討が盛んに行われている。この情報図は、沿岸域の自然環境および社会・経済活動などに関するさまざまな情報を網羅したもので、流出油事故時の防除計画の策定および防除活動の実施に際し、保護優先度を判断するための参考資料などとして使われるものである。
当協会は、本事業を通じ、わが国のセンシティビティ・マップ整備・普及事業の促進に積極的に貢献することにした。

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二、事業の背景
平成元年三月、米国アラスカ州プリンスウイリアムズサウンドで発生したエクソンバルディーズ号による大規模流出油事故は、防除作業の初期対応の遅れから貴重な自然環境と水産資源に莫大な被害を及ぼすとともに、広範囲に拡散した油を処理するために諸外国の支援を求めるなど、その後の流出油除去作業は困難を極め、大規模流出油事故への対応の難しさを世界中に認識させる教訓となった。
この事故を契機として、IMO(国際海事機関)での論議が重ねられた結果、平成二年十一月、大規模流出油事故へ対応するための各国の油防除体制の強化と国際的な協力の枠組みを定めた新しい条約、0PRC条約が採択された。
同条約は、平成七年五月に発効し、わが国に対しても平成八年一月十七日から効力を生じている。
0PRC条約では、第六条に規定されている「準備及び対応のための国家的な緊急時計画」において、立案に際して考慮すべきガイドラインという形で、防除計画の策定や防除活動の遂行など大規模油流出事故への対応を迅速かつ効率的に行い、事故による被害を最小限に抑えるなどの目的のもと、その沿岸域の保護優先度などに関する情報を網羅した「センシティビティ・マップ」と呼ばれる情報図の作成が勧められている。
わが国においても、0PRC条約の批准に伴い、平成七年十二月に閣議決定された「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」の中で「関係行政機関は、油流出事故に対応する措置を的確に講じ、被害の発生を最小限に抑えるための参考とするために、各海域ごとの自然的、社会的、経済的諸情報、すなわち漁場、養殖場、工業用水等の取入口、海水浴場、珊瑚礁、藻場、干潟、鳥類の飛来・繁殖地などに関する情報を収集・整理し適宜最新のものとして維持するとともに、それぞれの行政に反映できるように、例え

 

 

 

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