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「この防災訓練所では、昭和五十一年の設立以来、消防訓練に主力をおき、これまで四万人余りの人が受講しました。消防訓練については一応の浸透をみて、かなりの成果が上がったと自負しています」と訓練の実績を語る。
「日本では、安全について“事故が発生しないようにどうするか”という事故防止に対する意識は高いと言えますが”事故が起きたらどうするか”という事故対応は遅れていると思います。事故が発生した場合、いかに早く適切に対応するかも大事であり、訓練所ではこの点も重視しております」と事故発生後の対応策の遅れを憂う。
「わが国は、エネルギーのほとんどを油に頼っています。油は原油として船で輸入されますが、なんらかの要因によって、油が海上に流出すると、自然環境の破壊はもとより産業活動、漁業活動、海洋レクリエーションなどの社会的、経済的影響は計り知れません。流出油事故が発生してから防除に着手するまでの時間が、一時間以内の場合と二時間以上かかった場合とでは、防除に要する費用は四倍にも跳ね上がるとの資料があります。流出油事故では初期対応活動がいかに重要であるかを示していると言えます」と初期対応の重要性を説く。
「この被害を最小限に抑えるためには、的確な初期対応活動が期待でき流出油防除に関する知識と技術を持った職員の確保に加え、@あらゆる事故の発生と被害を想定した事故発生以前の詳細な計画=緊急時計画日の確立A事故発生後の的確な初期対応計画=オペレーション計画=の立案などが必要となります。IM0は、流出油事故に対応する人材育成のために、訓練カリキュラムを決めました」と流出油事故対策の基本を述べる。
「外国では、大きな流出油事故が起きたときには、ボランティアが活躍しております。日本でも海事・港湾・行政等の関係者のほかに、一般の人にも防災知識を持っていただき、流出油事故に備えてほしいと願っております」と結ぶ。
[略歴]山口県生まれ、46年海保大卒、海上保安庁・山口県庁勤務、米国での防災研修を経て58年訓練所主任教官、二年に現職

 

 

 

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