内航タンカーの近代化船計画

全国内航タンカー海運組合 近代化船対策室長 下野雅生

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はじめに
内航海連業界は、二十一世紀に向かって労働力の不足と高齢化が深刻な問題となっている。
このため、内航タンカー海運組合では、雇用の促進と定着率の向上を目標に労働環境の改善および少数の乗組員で安全でスムーズな運航が行えるような近代化船を実現させることを目指している。
タンカーは、事故を起こすと自然環境や社会に甚大な影響を及ぼす危険物を輸送している。そこで内航タンカー海運組合は、安全性と信頼性を確保し、持続性のある地球環境の保全を求めて、学識経験者の方々に客観的な立場から検討・指導をいただき、社会的な評価が得られる近代化船の普及につなげることにした。
二つの研究会で検討
具体的には、平成四年六月に行政、船舶技術研究所、荷主、造船所、日本海事協会、学識経験者、全日本海員組合、業界関係者等で構成する「近代化船研究会」を発足させた。
また、これと並行して平成五年四月から、船舶技術研究所を中心に学識経験者等による「共同研究/安全研究会」を組織し、理論研究とシミュレータ実験を含む、より実証的な手法によって、問題点の抽出と解決法を研究した。
研究分野の仕分けとして、航海部門(一人当直体制の確立)、機関部門(超省力化機能)、荷役部門(二人体制による荷役の完遂と安全と信頼の向上)、着難桟・係船部門(安全と省力化機能向上)および陸上支援部門に分類して進めた。
この結果として、近代化船中間報告書、荷役自動化・着難桟支援・航海支援システム報告書、近代化船講演会講演集、航海システム開発報告および造船学会誌への投稿等にて発表し、各位の所見を得た。
これらの概要のうち、割り当てられた紙面の関係で、ここでは三部門について要約したものを紹介する。詳細は各報告書を参照願いたい。
1、航海支援システム
高度航海支援システムの機能ブロックを図1に示すが、その特徴は次の通りである。
(1)航海計画
自船が航行すべき航路を作成・修正することができる。また、作成された航路に対する定時性や燃費等の評価をオンラインで入手した海象データを用いて行うことができる。
(2)自動操船
自船が実際に航行する航路が設定されると、システムは自船と航路との相対位置を常時監視し、外力による流れを考慮して設定航路を自動航走するための自船の設定針路を計算することができる。
また、設定航路に対し、目的地への定刻到着と省燃費の観点から海象データを考慮して航海速力を計画することができる。
変針または変速の必要が生じると、設定針路または設定船速とその理由が、音声または映像表示で提示される。これに対し航海当直員が音声およびワンタッチにより確認を行うことで変針または変速が実行される。

 

 

 

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