海の気象

津波の測り方

西澤純一
(気象庁 海洋気象部海洋課)
1、はじめに
平成五年の北海道南西沖地震により発生した津波による大災害等をきっかけとして、沿岸における津波の防災に一層力が入れられています。実際に津波を体験したことのある人は少ないと思われますので、ここでは、津波を測るという一面から、気象庁での津波観測を紹介します。
2、津波とは何か
海底で発生した地震に伴って津波が発生し、海岸に押し寄せて大きな被害を与えることがあるのは、良く知られています。
津波は海に起きる波の一種ですが、その発生原因を考えれば、風などにより海面に生じる波、つまり波浪とは違って、海底まで及ぶ深い波であり、海水全体に影響が及んでいることがわかります。
そのため津波は海底地形の影響を受け、進行速度や方向が変化します。進行速度については、深い海ほど速くなり、例えば水深四千メートルの場合に時速七百キロメートル以上という高速で伝播します。
津波の進行速度や方向が変化することによりエネルギーの分散や集中が起こり、津波による被害に地域差が生じます。津波が海岸で大きくなるのも、水深が浅くなって進行速度が減少するためエネルギーの集中が起きるためと考えることができます。
3、何を測るか
津波を表現する方法はいろいろありますが、気象庁では、津波の第一波により海面高度の変化が始まった時刻を、津波の到達時刻として発表しています。一方、津波の高さについては、海岸において海面の高さの変化がどれくらいあったかを測っています。
津波は、繰り返し押し寄せるので、それぞれの波の高さを測っていますが、必ずしも第一波が一番高くなるとは限りません。
4、どのように測るか

<図1>検潮所の構造

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津波の到達時刻と最大の高さを測るためには、津波が到達する以前から海面の高さを測り続けておく必要があります。
津波を測る方法としては、井戸内の水面の高さを測る方法、超音波により海面の高さを測る方法、圧力センサーにより海面の高さを測る方法等があります。
井戸内の水面の高さを測る施設を気象庁では「検潮所」とよんでいます。検潮所の構造を図1に示します。海岸に設置した井戸(検潮井戸)に、導水管を通じて海水が導かれ、井戸内の水面の高さが海面と等しくなるようになっています。さらに波浪や船舶等の影響を受けないように工夫された構造となっています。
井戸の真上に検潮儀とよばれる観測装置を設置し、そこからワイ

 

 

 

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