海の気象

日本海の霧

西澤純一
(舞鶴海洋気象台海上気象課)
一、はじめに
気象庁では、船舶の安全航行のための情報として、北西太平洋海域および日本周辺海域における海上気象の予報、警報を全国に十二カ所ある地方海上予報中枢官署において発表しています。このうち舞鶴海洋気象台では、日本海西部(図1参照)の地方海上予報を担当しています。
この日本海西部での船舶の安全航行を妨げる要因には、強風により波が高くなること、霧により海上での見通しが悪くなることが挙げられます。気象庁では、海上に霧が発生している、もしくは発生する恐れがある場合は、海上濃霧警報を発表し、船舶関係者などに注意を促しています。
ここでは、日本海で発生する霧について紹介します。

03-012-1.gif

二、霧の発生要因
霧とは、微小な水滴が数多く空中に浮かんでいる現象で、視程が一キロメートル未満となり、遠方が見えにくくなった場合を言います。空中に浮かんでいる水滴は、空気中に含まれている水蒸気が冷やされ、水に変化することにより生じます。
これは雲の発生の場合と全く同様ですが、霧と雲が異なる点として、霧は地上(水上)に接していることが挙げられます。
空気中に含まれる水蒸気が水滴に変化するためには気温が下がる必要があります。雲の場合は、上昇気流による気温の低下が主な原因となりますが、霧の場合は、冷たい地表面および海面や周囲の空気と接することによる気温の低下が原因で発生します。
また、空気中に含まれる水蒸気量が多いことと、空気中に凝結核(気体=水蒸気が液体=水に変化することを一般に凝結と呼びます。凝結は液体や固体等の微粒子を芯として起こり、この芯となるものを凝結核と呼びます)が存在することも必要です。海は大気へ多量の水蒸気を供給しますし、海水の飛沫からは海塩核という種類の凝結核が生じるため霧が発生する条件が整っており、一度に広範囲で霧が発生しやすくなっています。
三、霧の種類
霧の発生には、いずれの場合も気温の低下が直接的な原因ですが気温が低下する主原因により移流露、放射霧、混合霧などに分類されます。日本海に大規模に発生する霧のほとんどは、四で紹介するように移流露と考えられています。
また霧の発生する場所の地形等

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ