ナホトカ号の重油流出事故

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今年こそ平穏無事でありますようにと、祈ったばかりの一月二日午前二時四十分頃、C重油約一万九千トンを積んで、中国の上海からロシアのペトロパブロフスクに向け航行していたロシア船籍タンカー、ナホトカ号(総トン数一三、一五七トン三十二人乗組)が、日本海の島根県隠岐島沖において船体が破損し、船首部分を残して沈没、貨物のC重油が大量に流出した。
この事故では、ロシア人船長を除く乗組員三十一人が海上保安庁の巡視船、航空機、海上自衛隊の航空機の懸命の救助活動により救助されたことは幸いであった。しかし、流出油と船首部分は、北西寄りの強風によりわが国の日本海沿岸に漂着し、各地に深刻な被害をもたらした。
事故後の油防除の状況、漁業被害などについては、テレビ、新聞で日々報じられているが、流出油の防除が早期に終わり、きれいな海と元通りの漁業の復活の早いことをを願うものである。
また、二月の時点では、海難事故原因、C重油流出対応、漁業被害、損害補償など関心の深いテーマについて、結論的なあるいは突っ込んだコメントをできる段階ではないが、それぞれの分野でご活躍の四人の専門家にお願いして、現段階での所感をお聞きしたので紹介する。
海難事故原因
東京商船大学 名誉教授 岩井聰
ナホトカ号の海難事故当時の明確な情報を得ていませんが、先ず感じますことは、あの種の船がトータルダメージを起こすような環境条件(気象・海象)は、はたしてどうだったのか。本当に今回の事故を未然に防げないような状況であったかという点ですね。
ところで、今回の事故原因となった荒天下の操船について、船と人の問題に着目してみますと、実質的にはサブスタンダート船に類する船体であった模様ですが、それだけに日頃の運航や保守を通して、その耐航性能を十分把握・熟知して荒天状況にマッチした速力調整や針路選択などの適切な操船をすることが、荒天運航下の事故防止の第一要件ですが、その点はどうだったのでしょうか。
また、万一不幸にして緊急事態になった場合には、いち早く必要な通報つまり他の支援に役立つ具体的な状況、的確かつ技術的な情

 

 

 

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