一九八二年に海洋法の諸問題を包括的に扱った、国運海洋法条約が採択されました。
3、わが国の対応
わが国は、一九七七年(昭和五十二年)に領海法と漁業水域に関する暫定措置法を制定し、領海の幅を十二海里に拡大するとともに、二〇〇海里の漁業水域を設定(一部海域は除外)し、広い領海・狭い公海へと方針を転換しました。ただし、国際航行に使用され、かつ、幅の狭い海峡である宗谷海峡・津軽海峡・対馬海峡西水道・対馬海峡東水道・大隅海峡の区域については「特定海域」として、当分の間、領海の幅は三海里に抑えられました。
昨年のわが国の国連海洋法条約の締結に併せて関係する国内法制の整備もなされましたが、その一つに領海法の一部を改正する法律(平成八年、法律第七三号)があります。旧来の領海法は法律名が「領海及び接続水域に関する法律」に改められましたが、法律に規定される領海の幅については従来と変わらず内容は次のとおりです。
(一条一項)
わが国の領海は、基線からその外側十二海里の線(その線が基線から測定して中間線を超えている部分については、中線=わが国と外国との間で合意した中間線に代わる線があるときは、その線=とする。)までの海域とする。
また附則第二項の例外規定である特定海域に係る領海の幅も従来を踏襲し、三海里のままとしています。(図1)
わが国の領海の幅は原則十二海里であり、これに代わり中間線までとなるところは、地理的には幾つか考えられますが、宗谷海峡と対馬海峡西水道はそれぞれ特定海域に該当し、当分の間、領海三海里が維持されるため、現状では、北方領土の一つである択捉島と得撫島との間にある択捉海峡だけです。
国連海洋法条約には、いろいろな条項に距離や長さの測定の単位として海里が用いられています。
蛇足になりますがこの海里について若干説明させて頂きます。
海里とは、航海および航空において距離を表わす単位で、海図上の二地点間の距離をディバイダーで読取り表現するにはとても便利であり、その地の緯度一分の長さを一海里として用います。実際の緯度一分の長さ(メートル表示)は、その地により異なります。しかし、国連海洋法条約に用いられている海里は、一九二九年(昭和四年)のモナコでの国際水路会議において決定された国際海里(一海里は一、八五二メートル)を採用しています。
<図1>特定海域の例;津軽海峡