矢先、十月十二日に根室の漁船がだ捕連行されました。また、八月末に塔瑁瑶水道付近で二隻の漁船がロシア警備艇の銃撃を受け、乗組員二人が負傷しています。
西山 ひところだ捕事件は影をひそめたようでしたが、このところまたまただ捕が増えはじめているようですね。その背景になにかあるのでしょうか。
赤石 最近のロシア側の越境操業船に対する取り締りは、武器の使用を含めた従来にない厳しい姿勢になっています。平成六年以降は毎年「プチーナ(漁期)」作戦と称して自国の密漁船も含めた大規模な取り締りを展開していますが、その結果、我が国漁船の被だ捕は平成六年が七隻五二人でこのうち銃撃を伴ったものが二隻、平成七年が二隻でこのうち銃撃を伴ったものが一隻でした。
西山 そうですか。漁民は安全操業を願っていることでしょうが困ったことですね。現地保安部としては当然被だ捕防止に全力をあげていることと思いますが、具体的にはどういう対策をとっているのでしょうか。
赤石 根室海峡における巡視船艇のしょう戒体制を従来の二隻体制から原則三隻体制に強化するとともに、北海道等の関係機関との連絡を密にして、各漁業組合を通じ漁業関係者に対する被だ捕防止指導を強力に推進しています。
また、根室海峡では、ロシア側の警備艇も常時パトロールしているため、巡視船艇は同海峡内で操業する漁船や一般船舶に対して、ロシアが主張する領海内へ入らないよう直接指導しています。
実は、昨年九月二十四日には、しょう戒中の巡視船がロシア主張領海内を航行していた日本漁船をロシア警備艇が臨検しているのを発見したため、巡視船が無線で警備艇に対して「単に航行しているだけの漁船をだ補することは認められない」旨粘り強く要求したところ、約三時間半後に釈放されるという事案も発生しておりまして、非常にテンションの高い海域となっています。
従いまして、巡視船船長はじめ乗組員全員は、この海域の特殊性および任務の重要性を十分認識して、非常に厳しい自然条件の中日夜高い士気をもって業務の遂行に当たっているわけです。
流氷対策
西山 よく分かりました。気象・海況の厳しい中を本当にご苦労さまです。
ところで、冬になりますとオホーツク海を中心に流氷の季節に入り、流氷による海難が報道されますが、流氷対策を含めてお願いします。
赤石 平成七年は、流氷による航行阻害で四件の海難が発生しております。一隻は日本船、三隻はロシア船でいずれも気象・海象の不注意が原因でした。
ロシア船については、三隻とも稚内向け航行中に流氷に進路を阻まれて航行不能となったもので、その後流氷域が風潮の変化で移動して航行可能となり自力で開放水面へ脱出したものです。
風潮による流氷域の移動は、予想以上に速いことから、気象・海象情報の早期入手に併せ、当本部で提供している流氷情報・海氷速報等によって、総合的な流氷域の動静を把握することが海難防止の決め手となります。