つれづれにB

尾瀬ヶ原へ(2)

山本繁夫
岡安孝男 画

 

三、ザゼンソウ
中田代の犬堀川の下流にあるテーブルべンチ近くの「下の大堀」あたりへくると、川岸沿いに白い色の目立ったミズバショウの群落が広がっている。いくつかに分かれている流れの水際に咲いている景観を眺める。川の流れる岸近くでは雪解けが早いので、さきがけて咲いているのであろう。
中田代付近にくると湿原地帯の雪も少なくなって、木道も度出している部分が多くなったので歩きやすい。二列になっている木道の間には、花軸をぐるりと包んだ白い仏熔苞のミズバショウと、黄色いリュウキンカの花が見える。間もなく竜宮小屋の前に着く。三十人ほどがテーブルを囲んで談笑している。
竜宮小屋の前を出て下田代に入る。歩いている木道の周りに暗紫色の苞を地面からのぞかせて、小さく黄色に光る花を内側に抱いているザゼンソウが三輪咲いていた。ダルマさんが座禅しているように見えるので、この名があるという。

 

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小さな流れに架かっている橋を渡ると、しばらく木道が雪に覆われたりしたが、正面に見える健ヶ岳が近くなるにつれて木道の雪はなくなった。歩きやすくなった木道を歩いているうちに、見晴十字路にある弥四郎小屋の前に着いた。テーブルベンチには二十人ほどが休んでいた。
見晴十字路では三十分ほど休憩した。出入りする人々の表情や行動には、それぞれの動きが見られた。三条の滝へ向かう人、東電小屋からヨッピ橋を渡って上田代を経て山ノ鼻に出る人、宿泊予定の尾瀬沼畔の山小屋をキャンセルして鳩待峠へ引き返す人、尾瀬林業会社の人に案内されて尾瀬沼方面に向かうグループなどがあった。桧枝岐小屋の前では機械で雪を吸い上げて、パイプの先から吹き飛ばしながら除雪作業をしていた。
私もテーブルベンチを出発して、雪渓の残っている燵ヶ岳をあとにして山ノ鼻方面に向かう。竜宮十字路からヨッピ橋を通って、中田代の三叉路へ出ようと思って景亀山の山麓の方へ歩き出した。木道の残雪が少しずつ増えてきて歩きにくくなった。
かなり離れて前方に同じ方向へ歩いていた三人連れがバックしてきたので、理由を聞いてみると、まだかなり雪が残っているので、雪の少ない方へ行くと言っていた。私も変更して別れ道の竜宮十字路まで引き返した。十字路の近くのテーブルベンチで休憩して、昼食をとることにする。ブルーのトレーニングウエア姿の中学生が、五人ほど休憩していた。
四、 案内板
昼食後再び歩き始める。右に見える景鶴山や八海山の山麓には、残雪が見える。まだ緑の少ないダケカンバの樹肌は、少し明るい褐色で季節の動きを感ずる。左側に見える皿伏山、白尾山の山麓にもまだ雪が残っている様相である。所によって雪はあるが、自然の営みは確かな動きで進んでいる。
雪の少なくなった原や池塘の周りには、

 

 

 

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