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それとともに日本人の意識も変化している。国が毎年実施している「国民生活に関する世論調査」(総理府)によると、既に経済的物質的には国民の約9割が中流意識を持ち、「今後の生活で重きを置くこと」についての答えも、1970年代後半に「物の豊かさ」から「心の豊かさ」に転換して以降、両者の差は広がる一方になっている(図2−2−4)。これは「経済至上主義」(エコノミック・アニマル)の時代から「精神的豊かさ」を求める時代になっていることを示しており、この傾向は21世紀初頭にかけてさらに進むことが予測されている。

 

2.成熟化社会の進展

(1)環境に配慮する社会
現在、全世界的に“人類の持続可能な経済社会”が渇望されているが、その実現のためには人口増加と環境保全の問題が二大課題としてあることは言うまでもない。しかし、我が国においては、人口は高齢化が進み、総人口も2007年頃をピークにその後は減少するという状況にあり、環境保全についても、国あるいは地域社会で今、積極的な対応がなされている。しかし、環境の問題について言えば、人々の物質的豊かさの追求と環境破壊・汚染との相関関係的問題は未だ解決されていない。ただ、最近の日本人一般の意識としては、環境が破壊され、人類の生存が脅かされるならば、何のための経済社会の発展が、という考え方が急速に高まっている状況である。そしてその背景には消費中心の便利さのみを追求している生活スタイルヘの疑問、生活の在り方や生活の質の見直しがあるとみなされている。こうした人々の環境認識は、生活と環境の関係を考え、環境への負荷の少ない方式での生活行動を目指す社会的コンセンサスの形成になることも予測される。
「杜の都仙台」と称され、我が国の大都市の中では最も自然環境に恵まれ、緑多い街を誇りにしている仙台市民は、「杜の都の環境をつくる条例」(1993年)から「仙台市環境基本条例」(1996年)まで多くの環境保全策を市民との協調で発展的に打ち出してきている。また、環境認識については、教育・啓発が最も重要と考えられているが、仙台市におけるゴミ処理・リサイクルセンターは教育委員会やシルバー人材センター等との共営で、学習、健康アイデアづくり、生産と幅広い市民の集う場所となっている。環境づくりの優れた事例である。
今日ヨーロッパ諸都市に見られるように、地域社会の環境破壊防止運動に発した市民活動(ボランタリー活動)が環境づくり活動に発展し、街の美化、緑化活動を行政と共同で展開しているが、仙台市等でも既にボランティアは顕在しており、山、川、海の自然環境保全、あるいは街の美化など多様な目標を持つボランタリー組織が生まれてくるものと思われる。

 

 

 

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