第2章 2010年に向かっての生活環境、社会環境の変化
第1節 生活環境の変化
1.家族と地域社会
(1)家族機能の低下 「家族」は人間社会の基礎的な構成単位であり、人々の生活の拠所である。また「家族」とは、生活を保持するための経済的安定性、精神的安らぎの場であり、家事をはじめ子の養育・教育、老親の介護などが行われ、そして、社会への役割も果すもの、と今日まで考えられてきた。しかし、現在の家族構成の縮少によって、従来家族の役割として行ってきた事柄が十分に行えず、人々の意識として「家族の役割」は残っているものの、その役割に対処できない家族が顕在化している。そのギャップが問題である。特に高齢者にあっては日本の伝統的な「家族意識」も強く、家族の役割に期待することが大きいため、例えば老後期の介護についても、家族の中で処理・解決したいという意向が強く残っている(図2−1−1)。 図2−1−1 寝たきりになった場合に介護すべき人
資料:1993年「老後の生活と介護に関する調査」(総務庁) 注1調査対象は、全国60〜69歳の男女。 しかし、核家族等小家族化の一層の進行によって家族の持つ機能は急速に低下し続けている。特にサラリーマン家族が中心となる都市部では、世帯員数は少なく(仙台市:2.48人1995年)、子のいない世帯、特に高齢世帯も急増しつつあり、家庭内での様々な問題の処理・解決を困難にしている(図2−1−2、図2−1−3)。例えば、「高齢者一人暮らし・夫婦世帯に関する調査」(総務庁1995年)によると、「介護を頼む相手」として、大都市では、配偶者や子供、子供の配偶者といった家族に介護を頼む人が中・小都市に比べ少なく、かわりにホームヘルパーや訪問看護婦、民間のシルバーサービスに期待している者が多くなってい
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