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(3)世帯推計の方法と前提条件
ア推計手法
推計手法は、男女年齢5歳階級別世帯主率法を用いる。この方法は、推計された将来の男女年齢5歳階級別人口に、設定した将来の世帯主率を乗じるというものである。近年、世帯構造の変動は大きく、特に高齢世帯において夫婦のみの世帯や単独世帯を形成する割合が高くなっており、高齢者が子供と同居しない傾向が強くなっている。この傾向は将来も続くと見通される。
世帯主率法の最も簡便な適用法は、最新時点の世帯主率をそのまま将来に当てはめるというものであるが、これが合理的であるのは世帯構造の変動が小さい時期であり、近年のように世帯構造の変動が大きい時期には適さない。より精度の高い結果を得ようとすれば、将来の男女年齢別の世帯主率パターンを変化させる必要がある。具体的な世帯主率設定方法については以下で述べることにする。
イ基準人口および世帯類型
基準人口は、国勢調査べースの男女年齢5歳階級別の人口である。また、推計する世帯類型として、一般世帯数の他に単独世帯数と高齢夫婦世帯(世帯主年齢65歳以上の夫婦のみの世帯)数を取り上げた。夫婦のみの世帯を高齢層に限定したのは、市レベルでは全年齢の夫婦のみの世帯のデータが国勢調査から得られないためである。
ウ将来世帯主率の設定
厚生省人口問題研究所による全国世帯数推計(1993年10月推計)で得られた男女年齢別・家族類型別世帯主宰をべースに、1990年における全国と北九州市との乖離が将来も続くと仮定して、北九州市の将来世帯主率を設定した。ただし、全国における将来世帯主率は高齢層において大きな上昇が見込まれるため、1990年の乖離率を一定とすると、北九州市の高齢層の世帯主率が異常に高くなりすぎる場合が出てくる。これを避けるために、コーホートごとの変化の動向を勘案しつつ、一般世帯では70歳以上において2010年に乖離率が1になるように、また夫婦のみの世帯では75歳以上において2010年に乖離率が1.3になるように、それぞれ徐々に乖離率を縮小させることとした。

 

3.2010年にかけての地域社会の変化

ここでは高齢化の進展状況に着目しつつ、北九州市の地域社会の変化について考察する。その前提として、2010年に向かっての全国的な高齢化の特徴を整理しておこう。近年、「少子高齢化社会」という言葉で、少子化と高齢化が関連性をもって進んでいるとの見方が示されているが、これは必ずしも正しい認識とは言えない。確かに、出生率の低迷が続くことによって出生数が低いレベルで推移すれば、総人口に占める高齢者の割合は高まる。しかし、今後2015年くらいまでの間に急速に高齢化率が高まるのは、もともと規模の大きな1925年〜1950年生まれのコーホート(世代)が次々に65歳に達することに負う部分が大きい。

 

 

 

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