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2.3 レーダー情報のニーズ

陸上レーダー情報を必要とする船の数はさほど多くないと考える。沿岸海域に存在する船舶の大多数は漁船、プレジャーボート、内航船等、小型の船舶である。これらの船がリアルタイムにレーダー情報を受け取り、表示するような機器を装備することは考えられないし、その必要も無いであろう。主としてオープンシーを航行する大型船舶でも同様と考える。

必要があるのは針路変更を行うため、船舶通航が集中する岬や、瀬戸内海の一部等、行き会い船の動静監視が制約される海域を航行する一部の大型船舶と考えられる。大型外航船(油送船、バラ積み船、コンテナ船等)の操縦性は小型船より悪いので、早めの転舵が必要とされている。ちなみに、これらの大型外航船の大部分は外国籍(リベリア、パナマ、台湾等)であり、日本船との船間通信が円滑に行えないことも多いようである。

海上監視レーダーによる情報を必要とする船舶でも、この情報を直接操船に使用するようなことは考えられない。また、そのような用途に利用不可能な形の情報であることが望ましい。船舶の操船責任者は、自分自身の目と本船のレーダーによる情報しか信用しないであろう。このことは、海上監視レーダーの情報はあくまで操船援助情報に限定すべきであることを示している。

 

視界制限状態にある場合等、本船に対する反航船或いは同航船の船名を知り、その船と交信して操船意図を知り、本船の操船意志決定をしたい場合がある。また、漁船が密集して操業している場合など、陸上から通航船舶に情報を提供したい場合がある。海上監視レーダー情報がこのような目的に使用出来れば航行の安全に資するところ大であろう。

ひとつの例として、本船から見て○○○度、○○.○浬の南航船の船名または信号符字と連絡手段を沿岸情報センターに問い合わせ、沿岸情報センターは該当する船を捜し、人工合成映像に必要な情報をつけてFAX(またはPC通信)を送信することが考えられる。また密集したレーダーエコーの発生原因が、漁船によるエコーである旨を沿岸航行援助情報センターから船に通知できる。

 

2.4 想定されるシステムの運用案

上記の考察から、リアルタイムの生映像は必要ではなく、本船の航海環境を的確に把握し操船意志決定の参考となる資料を本システムが提供できればよいと考える。ここでFAX(またはPC通信)でレーダー静止画像情報を提供する場合の概略案を図2.4.1に示す。この図は、船側から海上監視レーダー画像の送信を要求した場合のものである。このような情報を利用する船舶は大型船舶であり、乗組員は大部分の場合、外国人と考えて文字情報は英語とした。

図は海上監視レーダーの映像を図式化した人工合成映像としてある。図式化の方式は、現に海上交通センターの運用管制に使用している人工合成映像を基礎とした。図を見ると分かるように、海岸線は日本海図を基礎にその概要を示すものとし、顕著な航路標識と設定されている航路があればそれを明示し、海上の目標は小円に速度ベクトルとID(Identification)コードを付加した。海上交通センターの場合とは異なり、円の大きさで船

 

 

 

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