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波長に対する感度差などのために信頼性を欠き使用が中断した経緯がある。現在、空港のRVRは日常的に計器測定している。また、海霧をミリ波地上レーダーで観測する試みも報告されている。これらをふまえ、視程の自動観測について章末の付録「視程観測センサー」に詳述した。

気象庁は「今日の気象業務、平成8年版」の船舶のための気象と海の情報の項目で…海上における着氷や霧域の予想技術を開発し、船舶の安全航行に影響を与える悪天現象に関する総合的な海上気象情報の提供を検討している。…としている。従って、着氷や霧域についての情報を提供するための調査・検討が進行中と推察される。しかしながら、岬など航路集束点の視程に関しては直接触れていないので、これについて海上保安庁が調査・検討する意義は大きいと考える。

 

1.1 波浪の観測について

波浪は海面上の風に原因を持ち、風浪とうねりに大別される。風浪は観測点付近を吹く風によって発生した波で、風速、吹送距離、吹続時間でその成長の程度が決まり、波頭はとがっている。一方、うねりは観測点から遠く離れた場所で発生した風浪が波動として進んできたもので減衰しつつある波であり、波長の短い成分は消滅し波頭は丸い。

当然ながら、風浪の向きとうねりの向きが一致することは少ない。沿岸での波向は、等深線や岸線の影響を受け複雑である。

沿岸波浪計による観測値は風浪とうねりの合成値である。それが観測地点では正確であっても、他の場所では異なることは上に述べたうねりと風浪の性質から容易に想像できることである。

気象庁では図1.1.1に示す過程を踏んで波浪図を作成(4)している。図の左側の情報源から取得したデータを気象資料総合処理システム(COSMETS: Computer System for Meteorological Services)の数値波浪予報モデルで処理し、さらに海洋気象部で波浪解析・予想を行った上、予報部からの気象解析・予報情報を加味して波浪図を作成する。沿岸波浪計の観測値はそのまま波浪図に記載されるが、その他の位置については数値波浪予報モデルによる理論値である。計算の格子間隔は近海では127kmであり、海岸線からの距離100km〜150km以内の沿岸海域では10kmである。

注:計算格子間隔について

格子間隔については資料[5:63ぺージ]に次のような記述があることに留意したい。

……沿岸波浪図は、近海及び沿岸海域の水産事業や船舶輸送及び海洋開発関連事業等に有効と考えられるが、これらの図を利用する場合に特に注意すべきことは、数値計算の過程で浅海効果が全く考慮されていないことである。これには、わが国の沿岸海域のほとんどが距岸数kmの沖合から急速に深まる特性を持っており、沿岸海域の10km格子網計算に浅海効果を考慮しても、その効果はあまり期待できないという事情がある。この様に、沿岸波浪図には海岸域の磯波等の浅海波の情報は表現されていない。…なお、海岸付近の浅海波を推算するためには数10m〜数100m程度の微細な格子網の展開が必要となる。この格子網で、日本の全ての沿岸海域を計算することは、その膨大な計算量とそれに要する計算時間からみて、現在のところ不可能に近い。

 

 

 

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