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第1章 調査研究の概要

 

1. 目的

わが国沿岸を航行する船舶にとって、海上交通に関する情報は不可欠なものであり、これらは、海上保安庁、気象庁、公益法人、民間等複数の機関から提供されている。

これら情報提供のさらなる充実を図るため、海上保安庁が運用する中波無線標識局の活用に着目し、平成6〜7年度に「中波標識局を利用した情報提供システムの調査研究」を実施した。

この調査において、現状の情報提供の問題点と利用者の必要とする情報及び伝達媒体を調査するために実施したアンケート調査によれば、放送モードで提供される情報は、専用受信機の必要性、長すぎる放送間隔、出力不足、聞き取りにくさ等の問題点が挙げられ、必要とする情報は、気象・海象情報が圧倒的に多いが、他に航行警報、航路港湾情報、漁業情報、各イベント情報等が要望されている。また、情報の入手手段については、前述の問題点から特別の受信機を必要としない、汎用の電話回線を使用し、情報を必要とするとき、何時でも得られることを望み、音声では分かりにくい情報は、文字や画像による視覚情報による提供が望まれている。

最近の公衆通信システムの高度化とパソコンの普及により、パソコンによるデータ通信が爆発的なブームとなり、陸上においては、これによる画像を含む効率的な情報通信が活発になされるようになった。

海上系の通信網においても、船舶電話の普及はもとよりFAXの搭載も増加し、また、通信品質が向上し利用範囲が拡大した衛星船舶電話や携帯衛星電話回線の整備がなされ、安価な携帯用端末機器もまもなく実用化されるなど、データ通信の環境も改善されつつある。

このような背景から、船舶が輻輳し、漁業活動が活発で、気象条件の厳しい沿岸海域には、利用者のニーズにあった、画像を含む正確で実用的な情報を、公衆通信回線を主体として、リアルタイムで利用できる航行援助情報システムの構築を検討する必要がある。

このため本調査研究は、「沿岸航行援助情報システム」の構築にあたり、必要とされる情報の収集、情報の加工及び伝達に関する具体的な調査研究を、日本財団からの補助金の交付を受けて実施するものである。

 

2. 調査研究の内容

(1) 必要とされる情報の種類と問題点の整理

(2) 情報収集手段の検討

(3) 利用可能な公衆通信メディアの特性と問題点の整理

(4) パソコン通信、インターネット、FAXサービス等による各種情報提供の現状調査

(5) 情報の加工と提供のあり方についての検討

(6) 他機関との情報ネットワークの構築の検討

(7) データ通信による電子海図表示装置への情報表示の考察

(8) 理想的な沿岸航行援助情報システムのモデルの構築

 

 

 

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