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地震発生直後から、神戸市消防局には火災通報や救急要請のために119番通報が殺到したが、そのなかに署員が受話器を取りあげてもまったく何の応答もない無言の通報が数多くまざっていた。消防が原因を調べても容易にわからず、そうこうするうちに無言電話の数は2000以上にものぼって、初期の消防の対応を大きく阻害するすることになったのである。
なぜ、こんなことが発生したかといえば、119番の電話接続の仕組みは一般加入電話とちがっており、たとえば一般加入電話から別の一般加入電話に電話するときは、一般回線から電話局を経由しふたたび一般回線を通ってつながることになっている。ところが、119番の緊急電話は、一般加入電話から一般回線を伝わり電話局にいくまでは同じだが、その後、電話局から専用回線を通じて消防の受付台までつながるのである。そして電話局内の装置のなかに伝送装置があって、交換機に支障が起こったときそのことを消防に知らせるために、消防機関受付台の電話が鳴るようになっている。しかも現在のところ、その呼び出し音は一般の通報と全く同じなのである。今回の震災では、激しい揺れのため交換機に支障が生じ、そのため受付台の呼び出し音が鳴ってしまい、消防機関が大いに混乱したのであった。
実は、1993年7月12日の北海道南西沖地震によって大きな津波被害を受けた奥尻島でも、これと全く同じことが起こっている。今後の震災対策を考えると、早急な対応が必要であり、もし災害時に無言電話がくり返しかかるようであれば、消防署は回線の故障を念頭において電話局に間い合わせるとか、電話局は回線の故障を伝えるのに普通の通報と区別がつかない呼び出し音を鳴らすのがはたして適切なのか、を検討するなどの措置をとる必要があるのではないだろうか。
問題点の第二は、災害時優先電話にかかわることである。災害時優先電話は、一般加入電話が異常輻較によって通話不能になっても優先的に確保される電話であり、また電話会社が行う通話規制(今回の震災では、NTTは95%規制をかけたという)からも自由な電話であるから、これを有効に活用すれば災害時の通信連絡はある程度可能になる。しかし震災の時点では、この災害時優先電話の措置は、新電電会社にも移動電話会社にも適用されていなかった。っまり、災害時優先電話の措置はNTTが電電公社時代に実施したものであり、電気通信が自由化され新電電会社が営業を開姶したときも、また、移動電話会社が設立されたときも、その措置が及んでいなかったのである。たとえば、ある防災機関が災害時優先電話に指定されている電話で市外に通話したとする。このとき、NTT回線を使って通話すれば災害時優先電話の機能は生きるが、もし料金的に安価な新電電会社の回線を使えば、NTT市内回線→新電電会社の専用回線→NTT市内回線という伝送の過程で、災害時優先電話の措置が消減してしまい、一般加入電話並みの疎通率になってしまうというわけである。今回もこうした事態が発生しており、これも早急な対応を必要とするが、NTT関係者の話では、少なくとも新電電会社とのあいだには災害時優先電話が生きるよ

 

 

 

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