ディファレンシャルGPS(以下「DGPS」という。)は、米国が運用しているGPS(人工衛星を利用した全世界的測位システム)の精度を更に向上させるための電波航法システムです。
我が国周辺海域には、浅瀬、暗礁等の障害物及び狭水道等が多く、船位不確実等の原因による船舶の乗揚げ、衝突等の海難事故が多発していることから、天候に左右されることなく、常に高い精度で船位測定を行える電波航法システムの構築が船舶交通の安全向上のために必要となってきております。
このため、海上保安庁では地上のある基準点で観測したGPSの誤差データを補正値として、陸上の送信局から利用者に伝送するDGPSを整備しています。これにより高精度の測位が可能となります。
補正データの伝送方法として、既存の海上用中波無線標識局にDGPS局を設置し、そこから電波を発射し誤差データを伝送することとしています。
GPSの精度が約100メートルの範囲内を流動的に変動するのに対し、DGPSでは、昼夜を問わず10メートル以下の誤差で安定して利用できます。DGPSの利用範囲は送信局から約200Km以内の海域です。
平成9年度においては、航路が複雑で航行船舶がふくそうする瀬戸内海及びその周辺海域として室戸岬(高知県)、江埼(兵庫県)、大浜(愛媛県)、瀬戸(愛媛県)、若宮(長崎県)に、東日本の大平洋沿岸海域として金華山(宮城県)、犬吠埼(千葉県)、八丈島(東京都)に、九州沿岸海域として都井岬(宮崎県)、大瀬埼(長崎県)に、山陰沿岸海域として浜田(島根県)にそれぞれ整備し、2、3年で日本沿岸海域をすべてカバーする計画です。
なお、平成9年3月から神奈川県の剱埼と三重県の大王埼にDGPS送信局が整備され運用を開始しております。 (整備計画図参照)
図1 ディファレンシャルGPS整備計画図
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