第2節 住生活の変化と現状
本章の第2節、第3節では、調査対象住戸の中から事前調査を基に17戸を抽出して実施した住まい方調査の結果より、油津の町家の住生活の変化と現状および今後の住生活について検討した。調査期間は1996年7月中旬〜8月初旬である。
(1)対象住戸の家族と住宅
住まい方調査を行った17戸の概略を表14に示した。種々の項目で多様な形態となっている。
家族形態としては、高齢化の進行を反映して、65歳以上の高齢者を含む世帯が多く、高齢者のみの高齢単身世帯および高齢夫婦世帯が6戸を越える。3世代家族は3戸のみである。家族員数も少なく、1人が4戸、2人が6戸、家族員が最も多い世帯で6人である。以前の家族については、「前は同じ家に3家族がいた」「最も多いときで12〜13人いた」「お姑さんの頃は、住み込みの人も含めて20人分も賄いをしていた」といった回答があり、家族形態や家族員数の変化の大きさが実感される。
家業別による住宅の形態は、漁家が5戸、魚の加工業家が2戸、商家が5戸、住居専用の居宅が4戸、手工業家が1戸である。建築形態は、全て木造建築で、平屋が5棟、2階家が11棟(併有する住戸を含む)、その他、3階家が1棟と地下部を有す2階家が1棟ある。建築年代は、一部が江戸時代末期と推定されるものから、昭和20年代前半に渡り、江戸〜明治期の建物が5棟、大正期が5棟、昭和初期が5棟、昭和20年代が2棟である。
土間の形式では、表通りから裏まで通った通り庭の形式の住戸が10棟みられる。漁家や魚の加工業家では、総2階の通り庭形式の住戸が多い。その中の1軒で、「この家は大正初期の建物だと思うが、最初から2階建て。近所では始めの方で、まわりはワラ葺きの家ばかりだった」という話が聴かれた。大正初期頃から、しだいに、総2階の瓦葺きの漁家が広まっていったようである。
居室数は2室から13室の規模である(居室数としては、玄関の間は除き、ダイニングは1室として数えた)。
(2)部屋の呼称と使い方
現在の住生活の状況からみると、部屋の呼称については、内容別に表3−2−2のようにまとめられる。
部屋の位置や格式による呼称として、床の間のある座敷を「表、オモテ」「表座、オモテザ」と呼ぶところが多い。この呼称は、漁家。商家の区分なく一般的に用いられており、漁家では多くが表通り側に位置している。一方、「奥座」「奥の間」の呼称もみられ、こちらもオモテと同様のハレの場としての呼称と、奥に位置することに由来する呼称の両方に使われている。「中の間」の呼称もみられた。また、屋根を下ろす裏側の下屋(ゲヤ)に位置する部屋は「下ろし、オロシ」と呼ばれている。
その他、部屋の機能や用途による呼称では、一般的な「居間」「茶の間」などの他、「ご飯のとこ」「寝ると
表14 油津町家住まい方調査一覧
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