
〔調査報告編〕
第二章 環境班の報告/麻生恵
1.青鬼地区の景観および環境的特性
■地理的条件
白馬村東部の、物見山や八方山など鬼無里村との分水嶺を源流とし、西の姫川に向かって流れる青鬼沢の北岸を70〜80m上がった場所に、東西に長いテラス状の緩傾斜地(標高750〜800m)が広がるが、この部分に対象地は位置する(写真-1)。
背後(北側)は階段状に高度を上げて岩戸山(1356m)へ続いている。その南斜面に位置する関係で、南東方から西方にかけて明るく開けた空間となっており、南西方向に五竜岳や唐松岳が眺望される。
■土地利用と植生
段丘状の緩傾斜地の西端(下流側)に集落、東部(上流側)に耕地(主に水田)が展開する。屋敷回りは家庭用の菜園や畑地、部分的に水田も存在。東部(上流側)の緩傾斜地は大半が水田で、周辺部に畑地がみられる。20〜30年前には青鬼沢沿いや青鬼神社西側の台地上(桂の清水西方)などに耕地がみられたが、現在は休耕し、人工林になった場所もある。(図-1)
集落や耕地を取り巻く森林はほとんどが二次林であり、とりわけ貴重な植生はみられない。人工林(針葉樹)の占める割合が大きく、スギおよびカラマツの植林地からなる。
緩傾斜地と青鬼沢との間の斜面にはケヤキ、ミズナラ、クリ、オニグルミなどの落葉広葉樹林が分布するが、その中にもスギの植林が点在する。その他、上流部の山腹斜面や、集落付近でも植林に向かない急傾斜地などには落葉広葉樹林が分布する。その多くもかつての炭焼き等の影響で二次林となっている。
神社、墓地、湧水、祠などに伴って比較的大きな樹木(スギが多い)が点在する。なかでも青鬼神社参道西側の湧水地(桂の清水)にはカツラの巨木があり、これは天然記念物級である(写真-2)。
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