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第6章 赤煉瓦建造物詳・保存活用の基本方向


6−1 近代化遺産の保存方策の方向性

(1)舞鶴の赤煉瓦建造物群の意義と特徴

 今回の調査において赤煉瓦建造物台帳に登録されたものは約120件にのぼっている。大規模な施設から小さな敷煉瓦まで多様なものがあるが、全国でも一つの地域でこれだけの詳紬なひろい出しを行ったのは、恐らく舞鶴市域がはじめてであろうと思われる。これにより、舞鶴の赤煉瓦建造物群のもつ意義と特徴がある程度浮かび上がってきたと考えられる。以下にその意義と特徴について記す。

?質と量の豊かさ(総合性と多様性)
 一般的に赤煉瓦建造物として恩い浮かべるものはまず倉庫及び工場であろう。全国で保存活用されているものの多くがそうである。舞鶴市は旧海軍のまちとして、多くの倉庫群や工場群が残存しているが、それに加えて土木建造物としての配水池、鉄道のトンネル、橋梁、さらには、生産施設のホフマン窯も現存している。また、旧海軍の関連施設だけではなく、市井の敷石に利用するなど極めて多様な形で残っているのが大きな特徴である。
 次にあげられるのが建造物群の総合性である。一般的に赤煉瓦建造物が残存しているものは、単体もしくは一工場の施設群程度であるのに比べて舞鶴に残る建物群は、建設当初に遡って膨大な一連の施設群として残っているものが多い。旧海軍工廠や北吸配水池と桂貯水池等総合的に残っているのが特質であり、群としての歴史を体現できるという貴重な施設群となっている。

?市街地中枢部に群として残存
 舞鶴の赤煉瓦建造物群の分布は、東舞鶴地区を中心として市域の全域に渡っているが、そのうち主要なものについては、市街地の中枢部特に湾岸に分布している。最も量的に集中しているのは北吸の倉庫群と日立造船の工場群であるが、いずれも東舞鶴港の湾岸にあり、特に北吸地区は、市役所等舞鶴のシビックセンターに位置している。市街地の中枢部にこのように赤煉瓦建造物群が残存しているのは極めて稀であり、これが、「赤れんが博物館」や「市政記念館」として再生されている要因でもあるが、今なおさらに多くの建造物群として残存しているものは、今後の利活用にむけての大きな要素になるものといえる。

?軍の要衛としての建設の歴史
 舞鶴の赤煉瓦建造物の歴史は旧海軍の歴史でもある。今に残る建造物群の大半が軍関係のものである。このことが、保存再生にとって、戦争の遺物として暗いイメージを持ってきたのは事実である。しかし、建造物群としてみると、一つは、当時の先端技術を駆使し、現代に通ずる極めて強固な建造物として残ってきたものとなった。調査が進む毎にその技術史としての斬新さ等が次々に明らかになっている。また、海軍の一連の歴史資料として設計図書をはじめとして、建物の経緯も文献資料として存在するなど、資料との一体性が確保されている極めて貴童な対象といえる。
 以上のように、舞鶴の赤煉瓦建造物群は単に多くの数が残っているというだけではなく、その多様性と総合性、立地条件の良さ、資料との連動性、技術の高度さ等から、まさに「地域の赤煉瓦博物館(フィールドミュージアム)」としての意義をもっている貴重な歴史的資産であるといえる。

 

 

 

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