当時はこのことを日本人は誰も書いていなかったのですが、フランスがラオスをかつての植民地にしていたものですから、フランスの学者が簿っぺらな本で珍しい地域があるということを書いていました。榎本先生も読んでおられて、ここを調査したらどうかといわれまして、それでチェンマイの郊外のサンパトンという村に八カ月間いました。稲作の一シーズンをその村で過ごしまして、『“Glutionous Rice in Northern Thailand”(北タイにおけるモチ稲栽培)』をハワイ大学の出版社から出したのが私が本を書いた最初なんです。ですから東南アジアの大陸部のモチ稲には非常に古くから関心があるんです。ただ、時間がなかったので、モチ稲栽培圏という地域の広がりの研究が十分にできなかったんです。未だに古代の中国、またインドネシアを含めた東南アジアの島のモチ稲のことが気になるんです。自分でいつかはやらんとあかんなと思っているのです。モチ米食文化圏、モチ稲栽培圏の圏外に、アッサム地域を除く南アジア(インド、バングラデッシュなど)があることも画白い問題だと考えています。インドは令くモチ米を食べないのです。