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日本の追儺と関連行事…高橋美都

 

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花祭りの鬼(愛知県豊根村 渡辺良正撮影)

 

「追儺」「なやらい」「鬼やらい」などに関連する「儺」の概念を、日本の本土と九州における現行事例を中心に周辺の事象を含めて考察してみたいと思う。「儺戯」という表記は、日本では現在も歴史的にも存在しないようだが、意識下の僻邪・駆邪・祓いを含めた「儺」の思想は、渡来の儀礼に土着の習俗を加えて広範に流布し、宗教的背景にも仏教、神道、陰陽道、修験道の影響に加え、民間伝承(農耕儀礼・祖先崇拝・適祖神[みちのかみ]信仰など)の複合が認められる。芸能の種別としては、田楽・猿楽・神楽・延年・風流などとも関わるようである。運営組織も寺社と地域が一体化した宮座や頭屋や若衆宿の制度、その近代的継承ともいえる青年団(自警消防団)や町内会や子供会などが関わる例が多い。日本における「儺」は、狭義には宮廷の儀礼の「大儺」と修正・修二会という新春の仏教儀礼における「悔過行事」に付加される「鬼」の儀礼に集約される。ただし、宮廷の「儺」は後醍醐天皇親政の復古的象徴の『建武年中行事』の頃を境に退転したとされ、痕跡は僅かである。一方、悔過とは、その意義を極言すれば、過ちを悔いて懺悔し、その咎による災いや生命力の後退を避け、幸福や平安を祈念する前提を満たすというもので、仏

 

 

 

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