クルーズ・リポート
今やちょっとしたブームになりつつある
世界最後の未知なる大陸・南極クルーズ 
職業を聞かれ、「クルーズの仕事をしています。」と言うと、皆さんがお持ちのようなクルーザーを販売していると勘違いされ、「船に乗っています。」と答えると、益々?のマークが顔面いっぱいに広がっていく。そこですかさず、「カツオの一本釣りです!」としゃあしゃあと言ってのけると、半信半疑ながら大抵の人が、「珍しいねぇ。細いのに体力あるんだねー。」と一応頷いてくれていた。 私が船に乗りだした頃の話である。今でこそ客船や船旅、クルーズといった言葉で巷で聞かれるようになり、昔のようにあれこれ説明しなくとも「飛鳥って御存知ですか?」「聞いた事ある。」「その船にも乗ってました。」と話が早い。 クルーズ船と一口に言っても、クイーンエリザベス2世号に代表されるようなエレガントな客船から、家族や仲間とワイワイできるカジュアルな船、今年12月にデビューする史上最大3000人の乗客数を誇る10万トンの大型船や数十人のプライベートタイプのもの迄様々である。海域も代表的なカリブ、地中海だけではなく、一年中季節の良いところを世界各地200隻以上の客船が航行している。今回は、耐氷能力を備えた小型船でまわる南極・探検クルーズを御紹介したい。 「南極」なんて旅行に行くところだとは思っていなかった。それが去年の統計によると、年間約600人の日本人がまさに旅している。この数値を多いと思うか少ないと感じるかは別として、年間といえどシーズンは12月〜2月に限られているので、(他は寒すぎるというより、氷に閉ざされ航行不能)ごく短期間に集中して訪れた事になる。初めての海外旅行が南極というこだわり派もいるが、ほとんどは世界中を行き尽くしたつわもの達だ。 
アクセスは2通り。オーストラリア、ニュージーランド側から大陸に足を踏み入れるか、チリ、アルゼンチン側から半島を攻めるかだ。いずれにしろ吠える40度、叫ぶ50度と呼ばれている暴風圏を乗り越えなければ到達しない。“苦あれば幸あり”を体をはって体験する。 6度目の南極を訪れた時のこと―。 ニュージーランドの最南端ブラフを出航して4日目の早朝、突然それはやってきた。ドドドーンと地震が起こったかと思う程(そんなバカな)大きく船体は揺れ、すべてのものは床に投げだされた。嵐の洗礼を受けたのだ。ローリングは30度を越えていて、真っすぐ歩けない。手すりに捕まっていないと、体をもっていかれて危険だ。キャプテンから「乗客は特別な用以外はキャビンを出ないように」と非常命令がでた。北西から吹きつける風速50メートルの風とうねりの中で、船が壊れるかと思うくらいドドドーンが続く。 ある程度の揺れは予想されていたので、予めテーブルやイスは固定されていたものの…、ギャレー(厨房)では食器がグチャグチャ、バーではグラスがバリバリになっていて、クルーは後片づけに大忙し。危なくて火も使えな
前ページ 目次へ 次ページ
|