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時または特殊な運航状態の場合は適用されない、というものである。

 

6. 条約改正の実施に関するFOLLOW UPACTION

 

今回の条約改正は、広い範囲にわたる大きな改正であったにも拘わらず、実質的な作業を開始してからわずか2年の短期間に実現した。また、それを実現するためには各国の意見の違いについて、かなり無理をした妥協が行われた。このため、改正された条約及び新設されたSTCWコードには多くの不明確な部分や暖昧な表現が含まれている。
このまま条約が発効してしまうと、各締約国の解釈がまちまちで混乱が生じる恐れがあるので、IMO事務局はSTCW条約担当課を設けるとともに、改正条約の実施に関して次のような準備を行っている。
第一に、平成8年の1月と6月に改正条約の実施に関する中間作業部会(INTERSESSIONAL WOKING GROUP)を開催して、条約の解釈の統一や暖昧な表現の明確化が検討された。この報告は平成8年9月に開催された第28回STW小委員会において、さらに検討されたうえ一応の結論に達し、今後CIRCULARの形で各国に回章されることになる。
第二に、平成8年中に世界の9カ所において「地域セミナー」を開催して、その地域の締約国、特に開発途上国や船員供給国の政府や関係者に対し、改正条約の実施に関する説明を行っている。この他にも「改正条約の解説書」の作成などが行われた。
これら一連の改正条約の実施に係わる作業の中で、一番論議を呼んだのは条約発効後のそれぞれの要件の実施時期の問題であった。改正条約では?T/15規則として「経過規定」が設けられているが、この規定に不明確な点があったことから各国の意見が激しく対立したが、結局、原則として、現在78年条約に規定のある資格や証明書については、?T/15規則による5年間の「経過規定」が認められるが、それ以外の今回新しく導入された資格や証明書については、1〜2の例外を除き、改正条約発効日から直ちに実施されなければならないことになった。また、経過規定が認められる要件についても、5年後の2002年2月1日には、95年改正条約が完全に適用されることになる。
改正条約は平成9年2月1日に発効したが、いくら厳しい規則を設け、詳細な能力基準を作っても、各締約国がその約束を実行して、本当に能力のある船員を養成し、資格を与えるのでなければ何の意味もない。今回の改正を機会に、SUB−STANDARD SHIPが世界の海から一掃されて、このSTCW条約の理念である「海上における人命、財産の安全と海洋汚染の防止」が実現することを期待したい。

 

 

 

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