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5.結  言

 

(1)液状化を取り巻く環境
 委員会でのこれまでの3年間の研究成果は、国際海事機関(IMO)の第2回DSC小委員会へ提出されたDSC2/12/1およびDSC2/12/2の2つの文書に集約されている。すなわち、前者は、液状化物質であるかどうかの判定方法の開発であり、後者は、記述のあいまいなBCコード付録Aの記述の適正化である。
 液状化は、多くの要素が複雑に関係する現象である。例えば、粒径分布、粒子形状、粒子の表面活性、間隙比、飽和度、比重などは重要な要素である。一つの貨物において適用されたことが、他の貨物に適用できるかどうかは、これらの要素がどの程度まで同一であればよいのかが明確にされていなければならない。すなわち、同一の産出場所からの貨物であっても、それを同等視することの意味付けを行うことは極めて困難な作業である。

 

(2)運送許容水分値
 液状化物質の運送に関しては、流動水分値および運送許容水分値という2つの指標により液状化が議論されている。運送許容水分値を計測する方法には、BCコードに記載されている、貫入法、フローテーブル法及びプロクター法の3つがある。これらは、いずれも液状化をある一つの計測方法により判断するという方法で、現象に関する上記要素の物理的な意味付けを省略し、特定の実験値などに現象を丸め込み、これを指標として液状化を考える。こうしたやり方は、複雑な現象を分かりやすく表すには都合がよい。しかし、この指標の決定とその計測方法については、十分なコンセンサスが得られたものでなくてはならない。そのために、新しい計測法を開発し、新しい指標を導入するには非常に長い時間がかかるものである。

 

(3)液状化物質
 液状化物質であるか否かの判定を行うには、こうした新しい指標を考案し、その決定方法を開発することが必要である。これらは、合理性があることは最も重要なことであるが、単純であり明快でなければならない。
 BCコードの方法では、液状化物質は付録Aに記載されている物質として特定されている。これらは、主として微粉精鉱である。微粉精鉱という定義は液状化物質よりも明確であるので、付録としては目的を達している。また、それ以外の物質でも、付録に掲載されていれば液状化物質である。しかし、ある物質が液状化物質であるか否かを判定するための方法はない。先に述べたように、微粉精鉱であるか否かは明確なのだが、それ以外でも液状化する物質はありうるのである。

 

(4)液状化物質判定法
 このような状況を踏まえて、「液状化物質でない」ことを判定する手法を開発することが本委員会の最大の目的である。このために2つのアプローチを採用している。すな

 

 

 

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