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3.6. 含水液状化物質の運送要件の検討

 含水液状化物質、即ち運送許容水分値を超える水分を含む液状化物質を運送する際には、貨物が液状化した場合でも安全性が損なわれることが無いよう、貨物の移動を抑える、または船舶の復原性に余裕を持たせる必要がある。本節では、含水物質の運送要件について、主として船舶の復原性要件の観点から述べる。

 

3.6.1. 含水液状化物質運送要件に関する規則及びIMOにおける審議動向
(1)我が国の規則(特殊貨物船舶運送規則等)
 特殊貨物船舶運送規則では、含水液状化物質運搬船(専用船)の復原性要件として、中央の幅が船幅の60%以内となる2の縦通隔壁を設け、この中央部にのみ含水液状化物質を積載することとしている。このことから、我が国の基準は、自由表面影響を直接考慮したものではないと言える。
 
(2)国際的動向
 平成7年3月に開催されたIMO−BC小委員会では、BCコードの一部要件のSOLAS条約第?章への採り入れが審議され、同年5月のMSCで承認された。これによって、含水液状化物質を運送する船舶("Special Fitted Ship")は、詳細な復原性資料を備えるべきことが、SOLAS条約第?章により義務付けられることとなった(1998年7月発効予定)。同小委員会において非公式に、含水液状化物質運搬船の復原性要件に関する各国の考えを聞いたところ、既に国内規則に明記している等の明確な回答は得られなかったが、基本的には、"Heavy Liquid Cargo" の運送と考えるとの回答が多かった。

 

3.6.2. 自由表面影響評価に基づく復原性クライテリアの検討
(1)IMO勧告
 前述の通り、含水液状化物質を運送する船舶については、基本的には、"Heavy Liquid Cargo" の運送を想定して、船舶の復原性要件を決定すれば良いと考えられる。具体的には、"Heavy Liquid Cargo" の自由表面が船舶に及ぼす影響を考慮することとなる。
 自由表面影響を評価するには、貨物の移動を考慮して復原挺曲線(GZ曲線)を作成し、これを評価すれば良い。GZ曲線の評価のクライテリアとして、IMOは以下の三つの総会決議(勧告)を出している。
[A.167(ES.IV)]:100m以下の大洋航海の船舶に適用。
a:GZ曲線の0度〜30度の面積が0.055m・rad以上であること。
b:GZ曲線の0度〜(40度または海水流入角の小さい方)の面積が0.09m・rad以上であること。

 

 

 

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