
3.5. 粒径分布に基づく液状化物質の範囲の研究
粒径分布に基づき液状化物質か否かを判定するためには、以下の三点を決定する必要がある。 (1)代表粒径の選定 (2)粒径分布の計測条件 (3)液状化物質のクライテリア このうち、(1)については、液状化は透水性と密接な関係があることから、透水性を評価する際の代表的パラメータである10 % 通過粒径 D10 を用いれば良い。物質に含まれる大きな塊は、液状化の可否にはさほど影響を与えないが、大きな塊を含むか否かにより D10 は異なる。よって、粒径分布を計測する際の最大粒径を規定しておく必要がある。 粒径分布に基づく液状化特性の評価は、3.3節で述べた通り、試験をしないで液状化物質ではないとの判定を下すためのものであるから、充分な安全余裕を見込む必要がある。また、石炭のように真密度の小さい物質は、物質の中に含まれる水による浮力の影響を強く受けるため、一定以上の真密度を有する物質とは別のクライテリアを設定する必要がある。 3.5.1. 粒径分布計測の際の最大粒径 液状化物質判定試験用容器の大きさは貫入法の小型容器に等しいこと、また、小型容器を用いる貫入法では最大粒径が 10 mm であることを勘案して、石炭以外の物質については、最大粒径を 9.5 mm とした。即ち、試料内の 9.5 mm 以上の粒子は、ふるい分けにより取り除く必要がある。 石炭の粒径分布に基づくクライテリアは、貫入法試験により決定した。貫入法における最大粒径は 25 mm であることから、石炭の粒径分布を計測する際の最大粒径は 19.0 mm とした。 3.5.2. スラグ関する粒径分布に基づく液状化のクライテリア ニッケルスラグ及びカッパースラグを用いて、粒径分布を変えて液状化物質判定試験を実施した結果は、3.4節で述べた通り、参考−1−付録2の表1に示てある。この表より、飽和度 70 % に対応するのは、 D10 = 0.5 mm であると言える。安全余裕を考慮して、スラグに対する D10 に基づくクライテリアは、1.0 mm と結論した。 3.5.3. 石炭に関する粒径分布に基づく液状化のクライテリア 貫入法試験を実施すれば、当該試料の水分値が流動水分値より低いか否かを判定することができる。そこで、石炭に対する D10 に基づく液状化のクライテリアは、各種の粒径分布の試料について、出来る限り水分値が多い状態で、貫入法を実施することにより調査した。 (1) 試料調製及び粒径分布 試験には、二つの鉱山から得られた石炭を用いた。試料の粒径の調製方法は、参考−1−付録2の3.3.1節に述べられている。試料の粒径分布は、参考−1−付録2の図5及び図6に示されている。 (2) 水分値の調製方法 3.3節で述べた通り、試験の目的は、通常の排水状態におけるクライテリアを決定することである。そのため、試料の水分値は、以下の方法により、通常の排水状態において示し得る最も大きい値に調製された。
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