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3.2. 運送許容水分値の計測

3.2.1. 計測の目的
 告示別表に定められた液状化物質の一部物質について、運送許容水分値(TML)[流動水分値(FMP)]の計測を実施し、その測定結果と併せて対象物質の性状、状態、船積水分値、運送方法等を基に総合的な検討を行ない、液状化関連規則の適用の条件を明らかにするための審議に資することが計測の目的である。
3.2.2. 試験内容
(1) 試 料
 測定試料は、告示に定める物質(21品目)の中から、目的に沿う対象物質として微粉精鉱以外の類似物質を主体に選定し運送許容水分値等の測定を行なった。試料の選定については、液状化物質検討部会に於いて協議し、省令改正後に測定した石膏・鉱さい・鉄精鉱・消石灰等及びその他、未測定の類似物質の中から輸送実態等を勘案し入手可能な物質を対象に測定を実施することとした。対象物質中の鉱さいに関しては定義付けが難しく、一般的には鉄鋼、非鉄等の金属精練に伴い派生するスラグ等の物質と考えられているが、業界では精練から派生する主製品を除いた物質は、微粉精鉱の類いからスラグ及び金属を含む様な物質までも鉱さいの範疇に含めている様である。従って、鉱さいは派生する履歴により性状、状態が異なるので種類が非常に多く、中でもスラグは何れも粒状であって粒度は千差万別であり、水分を殆ど吸収しない物質であるため、水分は自由水となり透過し粒子間で留まることが少ない。そのために、液状化現象が生じる可能性は非常に少ないものと推測されるので、可能な限り種類を多く入手し測定を行なう予定であったが、珪酸鉄、ニッケルスラグ、高炉スラグ、カッパースラグの極一部に限定された。
 また、鉱さい以外にも告示に定められた物質の中には、アルミナクリンカー・ジンクドロス・レッドドロス等液状化物質とは異なると思われる物質も測定対象として考えたが、これら物質の輸送実績が現実にあるのか、否かは定かではなく、貨物の履歴、使用目的等により、貨物の状態も千差万別で定型的なものは少ないものと予測される。従って、これらの物質は鉱さいと同様に可能な限り数多く測定することが望ましいが、試料の入手に苦慮しているのが実態であり、測定対象とするに至らなかった。
 これら物質の性状をみると、アルミナクリンカーは窯業原料の一種であり、本来、水分を全く含まない粒状に焼成された物質であるため粉末は殆ど含まない場合が多い。また、ジンクドロス・レッドドロスは、本来、鉱さいの範疇に含まれる物質であり、ドロスは金属を融解する際に派生する浮きかすで金属を主体とするため形状は不定型であり、粉末は少ない場合が多いものと考える。従って、これら物質は鉱さいと同様に液状化現象が生じる可能性は非常に少ないものと推測される。
 しかし、貨物そのものの性状、形態、履歴、輸送方法等を的確に把握しているわけではなく、不確かな要素が多々あることも事実である。例え、情報が収集できたとしても、当該物質には輸送と言う手段が加わり、海上輸送には机上で想像し得ない現象が発生することがあるので、通常では予測し難い結果となることも推測される。因って、輸送実態の確認等調査の上、試料の選定には十分な配慮が必要とされるものと考えていたが、

 

 

 

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