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基調講演

『ボランティアヘの期待』

宮城県知事 浅野 史郎
司会 続きまして、浅野史郎宮城県知事より「ボランティアヘの期待」と題し、ご講演をいただきます。浅野知事、よろしくお願いいたします。
●「良いボランティア」と「悪いボランティア」
浅野です。今日は「自治体とボランティアとのパートナーシップ」ということで、私は「ボランティアヘの期待」というお話をさせていただきます。
ボランティアということで言えば「良いボランティア」「悪いボランティア」というのがあります。私は昭和62年から1年9ヶ月厚生省で障害福祉課長をしていました。そのとき群馬県にある知的障害者の居住型施設の園長さんが、私のところへ「浅野さん、ボランティアっていうのも大変なんだ」と言ってやってきました。何かというと、その施設に「ボランティア」と称するような人たちが毎週来るそうです。その多くは週末、土曜日・日曜日に来るそうです。そうしますと、そこの職員はお休みでも、そのボランティアと称する方のお相手に出てきて1日施設をご案内する。ボランティアと言うから何かやるのかと思ったら、その人たちは視察にくるのがボランティアと思っているような人たちで、施設を案内すると、知的障害者に接するのが初めてな様子で、じろっと見る、少し遠くから腰を引いて見るというような大変無礼な振る舞いをして、そして20分から30分で「じゃあ、どうもありがとうございました、さよなら」と帰ってしまう。その後どこへ行くかというと、その施設からは15分のところにある温泉へ行くわけです。つまり、ある団体がその施設にボランティアに行き、ついでにちょっと温泉にも行って泊まるというわけです。けれどもその「ついで」というのは本当は逆じゃないか、温泉に行く目的をつくるために施設に行くのではないか。このようなものも「ボランティア」と称されているようです、これが困ったボランティア、「悪いボランティア」です。
「良いボランティア」というのはどういうものかと言いますと、横浜の栄区に「朋(とも)」という施設があります、これは施設の大要から言うと、精神薄弱者更生施設と銘打たれていますが、内容は重症心身障害児・重症心身障害者と言われているような人たちが通ってくるところです。重症心身障害者ですから、知的な障害と身体的な障害が重なっており、しかもどちらも重いわけです。身体的な障害を見れば身体障害者ですが、知的な障害に着目すれば知的障害者です。ですからその施設は、精神薄弱者通所更生施設ということになっています。そこの施設長の女性は、横浜の訪間学級とか障害の重いクラスの生徒たちのカウンセラーのような形で関わっていた養護の先生です。

 

 

 

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