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基調講演

 

『ボランティアへの期待』

 

岡山市長 安宅 敬祐

 

アナ・ミヤレスさんのすばらしい講演の後ですので、多くのことは申し上げなくてもいいような気がいたします。
私がボランティア社会をこれからどうしても岡山で作りあげていかなければならないと思ったのは、今後の日本が高齢社会や少子化社会になるということもありますが、戦後50年を経て今までの社会のありかたに限界が見えてきた、ということが感じられるからです。
私も役人の出身で政治家の1人ですのでちょっと言いにくいのですが、日本では政治家と官僚、企業というのは目立っているのですが、市民の顔がなかなか見えてこない、というのが現状です。しかしアメリカやヨーロッパでは市民の力を生かすボランティア活動は行政や企業の活動と拮抗するような大きな力をもっています。GNPで何パーセントに相当すると言われる方もおられますけれども、大きな力を持っている、という意味では第3のシステムになっております。そのような力がどうして出てくるのだろうか、またどうしてボランティア社会が出来たのか等を考えてみますと、日本はまだまだほど遠いなと感じざるを得ません。

 

●アメリカのボランティア活動にふれて

 

94年、アメリカのカリフォルニア州サクラメントで日米市長会議が開催され、私も出席しました。これは大きな会議なのですが、その会議を運営している人々は殆どボランティアです。会場を案内する人もボランティア、総会、分科会の案内、視察旅行の手配、その夜の夕食などもみんなボランティアが手配してくれるのです。サクラメント市役所の職員はあまり見かけませんでした。お昼御飯もある銀行家の方のご招待ですし、殆どボランティアしか目立たないのです。いろいろなトラブルが起こってもそういうことも含めて全部ボランティアで運営されており、老若男女いろいろな方がいらっしゃいました。その中にカリフォルニア州立大学デイビス校の学生が来ていましたので、「なぜこんなボランティアをするのか」と聞きましたら、「私にとってはボランティアはその大学の授業と同じぐらい非常に価値があります。日本の市長や、アメリカの行ったことのない都市の市長あるいは商工会議所の会頭といろいろな話し合いができるということは自分の人生にとってプラスになります。」と答えました。その人はパンフレットを配る仕事をしていましたが、なにか自分で生きがいを見つけ出しているという気がしました。もしこれが日本の場合ならどうでしょうか。日米市長会議が岡山市で開催される可能性もあるわけです。市役所には国際課という課がありますが、そんな次元の話ではなくて、市役所の全

 

 

 

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